仏政府は雇用確保のため議決権比率に固執
仏政府は、春の株主総会に向け、一時的に議決権比率を19.7%に引き上げてまで、「フロランジュ法」適用に固執した。理由は国内雇用の維持だとされる。約5年前、ルノーの業績が悪化した際、ゴーンCEOはリストラ策を打ち出したが、仏政府の注文で、小型車の生産をトルコへ移す計画は撤回を余儀なくされた。日産が2014年、欧州、中東、アフリカ向け小型車「マイクラ(日本車名マーチ)」の次期モデルを、ルノーのパリ近郊の工場で生産すると発表した時も、「インド工場の方が生産コストは安いはずで、フランスの工場の稼働率維持が目的だ」(外資系証券)と批判の声も上がった。仏政府の意向、特にオランド社会党政権の「地元雇用重視」の表れというのが業界の常識だ。
ルノーとしては、大株主である政府に正面切って敵対はできないが、経営の自由は確保したいというのが、今回の資本関係見直しの動機。ただし、日産との関係は微妙な面もある。かつて、日産に出資して「救済」したが、欧州の債務危機などを通じ、最近はルノーの経営不振が目立ち、日産がルノーを助ける局面が目立つ。業界では「日産はルノーの財布」と皮肉る声も聞こえるが、実際、ルノーの前期決算は純利益の約4分の3が日産からの持ち分利益だ。