音楽業界大手のエイベックスが日本音楽著作権協会(JASRAC)から離脱する準備を進めていることが分かった。これまで批判が多かった独占ビジネスは、変わるのか否か――。
「競争が生まれるのは歓迎すべきことだ」「JASRACも変わらざるをえなくなるかも」
公取などが乗り出して、局面が変わる
日本経済新聞が2015年10月16日付朝刊で、「音楽著作権 独占に風穴」と報じると、ネット上では、こんな期待の声も上がった。
EXILE、安室奈美恵さんら人気アーティストを抱えるエイベックスでは、これまでJASRACに約10万曲の著作権管理を委託していた。JASRACのシステムでは、CDの場合は管理手数料を6%取っている。テレビ局からは、放送事業収入の1.5%を使用料として徴収することになっている。
それが今後は、著作権管理を系列会社のイーライセンスに委託する。イーライセンスの管理手数料は、JASRACより安い5%で、さらに宣伝用の無料CDからは手数料を取らないのが特徴だ。日経の記事によると、著作権者からの同意を得て、15年末までに9割の変更手続きを済ませる方針だという。
音楽著作権を巡っては、2001年の法改正で民間事業者の参入が可能にはなった。しかし、JASRACが楽曲の使用時間などによらずに料金を取る包括契約を導入しているため、著作権管理に新規参入が進まない実態があった。
ところが、公正取引委員会が09年に独禁法違反でJASRACに排除措置命令を出すなどして、局面が変わってきた。最高裁が15年4月28日、包括契約が参入を妨げているとの判断を示し、JASRACも9月18日、イーライセンスなどとテレビ局からの使用料徴収について合意した。その結果、楽曲の使用時間に応じて、イーライセンスなども使用料を徴収できるようになった。
「著作権者や楽曲使用者のメリットは未知数」
もっとも、JASRACは、楽曲を300万曲強も管理しており、これで競争が生まれるかどうかは未知数だ。
ネット上でも、「まさかJASRAC生き残りのためにavexが助け船を出した形?」「最高裁判決を受けた業界全体としての手打ちだよ」と冷ややかな見方も出ていた。
また、使用料全体の3割を占めるカラオケなどの演奏権については、JASRACが今後もエイベックスの楽曲を管理することになる。使用料の徴収に労力がかかり、JASRACに頼らざるを得ないためだ。イーライセンスでは、テレビ局からの徴収と同じやり方をしたいとしているが、実現に向けて課題は多いようだ。
著作権管理の関係者は、JASRACの独占状態がどうなるかについて、こうみる。
「民間事業者の新規参入が出てきたことで、JASRACも今後は管理手数料などを引き下げる可能性もあるでしょう。しかし、競争が進まず寡占状態が続くならば、著作権者や楽曲の使用者になかなかメリットが出てこない恐れがあると思いますね」