「『めんどくせえ』って、みんな言ってるよ!」
これに対して、麻生氏の発言は「失言」だとして追及されかねないものだ。10月14日、安倍晋三首相は自民党の宮沢洋一税制調査会長に対して、17年4月の消費税率引き上げと同時に軽減税率を導入できるように具体的な制度設計を指示した。麻生氏は同じ日に札幌市内で行った講演で、
「これは言っときますけど、財務省は反対ですよ、ほんとは。『やれやれ』って言う人が多いんだもん、だから問題なんですよ。『めんどくせえ』って、みんな言ってるよ!」
などと発言。財務省が軽減税率の代案として主張していた「還付案」が退けられたことに対する「恨み節」ともとれる内容だ。
当然、翌10月15日午前の官房長官会見では、
「総理から導入に向けて連携を進めるという明確な指示が出たばかり」
だとして閣内不一致を指摘する質問が出た。
これに対して、菅氏は
「新聞報道があって、本人にも確認した。講演、これは非公開だったが、その中で麻生大臣が自らの発言として言及したものではなかったということだったし、現にそうだった」 「当然、麻生大臣を中心に、政府・財務省としても導入に向けた与党の検討に協力していくのは当然のことで、その姿勢に全く変わりはない」
などと説明。「めんどくせえ」というのは麻生氏の意見ではなく、麻生氏が周辺の声を紹介したに過ぎないという理屈だ。もっとも、安倍首相とはすりあわせをしていて、公明党をけん制したに過ぎないという説も有力だ。
14年4月には、さらに厳しい「ごり押し」に近い釈明を迫られた。麻生氏は14年4月25日の閣議後会見で、当時難航していた環太平洋経済連携協定(TPP)の日米協議について、
「そんな(結論を)出せるほど、国内でオバマが全部まとめきれるほど、今、力はないだろう?だって中間選挙するんだもん。中間選挙の前に結論を出せるとは思いませんけどね~。その間いろんな話を継続してやっていく、ということにならざるを得ないと思っていましたから...」
と述べた。早期の合意を目指すというのが当時の日本政府の立場だった。だが、麻生氏の発言は、14年11月の中間選挙前はオバマ大統領の権力基盤が不安定になることを背景に、交渉の長期化を見越しているともとれる内容だった。