プラチナ「延べ棒」買いが殺到 ディーゼル排気ガス不正で価格急落 

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   独フォルクスワーゲン(VW)によるディーゼル車の排気ガス不正問題が、プラチナ相場に影響を与えている。

   プラチナ相場は2015年に入って、金相場につれて下げ基調にある。世界的な景気の後退感が要因だが、そこにVWの不正問題が追い討ちをかけた。リーマン・ショック後の2009年2月以来の安値圏で推移している。

  • VW不正問題でプラチナ価格が下落、いまが「買い」か? (画像は、田中貴金属工業のホームページ)
    VW不正問題でプラチナ価格が下落、いまが「買い」か? (画像は、田中貴金属工業のホームページ)
  • VW不正問題でプラチナ価格が下落、いまが「買い」か? (画像は、田中貴金属工業のホームページ)

国内価格、3年ぶり安値 1グラム4000円割れ

   VWの排気ガス不正問題によってプラチナの価格が下がる理由は、プラチナがディーゼル車の排気ガスを浄化する触媒として使われているからだ。

   プラチナというと、結婚指輪などの宝飾品に使われているイメージが強いが、じつは産業用に多く利用されている。世界のプラチナ需要をみると、2014年は41.2%が自動車触媒用で、宝飾品用はそれより少ない35.3%だった。

   VWの不正問題をきっかけに、ディーゼル車のイメージが後退。消費者の「ディーゼル車離れ」が広がり、ディーゼル車からガソリン車、あるいはハイブリッド車などへのシフトが世界的に加速する可能性が高まっている。それにより、ディーゼル車の排気ガス用触媒としてのプラチナ需要が減退する懸念があり、それが売り材料になっているというわけだ。

   実際に、VWの不正問題が発覚した後、米ニューヨーク先物市場でプラチナは大きく値を下げた。2015年9月18日時点の1トロイオンス980ドル付近から、一時930ドル付近まで下落。今年の最安値を更新した。

   国内でも、プラチナ価格は下落している。金やプラチナを販売する田中貴金属工業によると、プラチナの国内価格は2015年1月以降、ディーゼル車需要の高い欧州で景気先行き不透明感が強まったことで、それまでの上昇基調から下落に転じ、1月19日には2013年4月以来、1年9か月ぶりに金価格を下回った。「現在もその状況が続いています」(田中貴金属工業)。

   2月以降は、南アフリカのランド安によって安定した供給が続き緩やかに値を下げていたが、7月に中国・上海株式総合指数の急落によるアジア圏の実需の後退懸念や、世界的な景気減速への不安感が強まったことで値を下げ、国際価格ではリーマン・ショック後の2009年2月以来6年ぶりに1トロイオンス1000ドルを割り、国内価格も12年9月以来3年ぶりに1グラム4000円を割り込んだ。

   さらに、9月に入ってVWの不正問題が発覚すると、プラチナ価格は9月29日に今年の最安値となる 1グラム3615円まで落ち込んだ。

   VWの不正問題は、プラチナ相場にかなりの打撃を与えたようだ。

プラチナの販売量、銀座店の7月は前年のなんと32倍

   プラチナ相場が下落する一方で、貴金属店が沸いている。100グラムあたり42万円前後の、プラチナの「延べ棒」を買い求める人が増えているというのだ。

   田中貴金属工業が2015年10月15日に発表した1~9月期のプラチナ地金の販売量と買取量によると、この期間中のプラチナの国内平均価格は1グラムあたり4381円で、前年同期の平均価格4817円を436円下回った。

   一方、プラチナの販売量は、前年同期と比べて3.6倍の9891キログラムに達し、9か月で14年の年間販売量の2倍を記録した。全国で最も来客数が多い銀座本店では7月に、前年のなんと32倍も売れたというから驚きだ。

   同社は、プラチナ価格が金価格を下回っている値ごろ感に加えて、1グラム4000円を割ったことが販売量の増加に影響しているとみており、「プラチナによる資産形成を考える消費者が増えていることがうかがえます」と説明する。

   ちなみに、買取量は前年同時期に比べて48%減少した。

   田中貴金属工業は、「一般にプラチナは金よりも高価なイメージがありますが、マーケットが小さく、相場が金につれて動く傾向にあるので、わかりづらいことがあります。今回はVWの不正問題が大きく取り上げられ、それもあってわかりやすかったのでしょう」と、消費者が殺到した要因を推察。「金をお買い求めに来店して、いろいろと相談しているうちにプラチナを買っていくというお客様も少なくなりませんでした」とも話している。

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