マイナンバー制度のシステム導入をめぐって収賄の容疑で逮捕された厚労省の職員は、出張や講演活動が多く、勤務実態が把握されていない状態だった。
同省の会見では週の半分以下しか出勤していなかったとも明らかにされ、その異常さがうかがえる。民間企業であれば考えられない状況だが、国家公務員の勤務管理はいったいどうなっているのか。
勤務状況が把握できず
厚労省は2015年10月13日の会見で、逮捕された情報政策担当参事官室室長補佐、中安一幸容疑者について「厚労省に出勤する状況は、週の半分を下回る程度が多かった」と説明した。
出張や講演活動などが多く、勤務状況については把握できていなかったという。報道では遅い時間にタクシーに乗って出勤していたとも伝えられ、その異常ぶりが分かる。
厚労省によると、職員の勤務状況は個別の出勤簿で管理しているという。毎日、定時に出勤するごとに、自身で出勤簿に押印し、出張や休暇の場合は各課に設置される担当者が処理をする仕組みだ。もちろん出張や休暇は、上司からの命令書類や事前の申請が必要だ。
この仕組みは厚労省に限らず、国家公務員の間で統一されている。人事院によると、職員ごとの出勤簿作成や、各課で「勤務時間管理員」を設置することなどが、国家公務員法にもとづき同院規則で各省庁に通達されている。
現場の職員「毎日出勤簿書いていない部署も...」
厚労省では中安容疑者の勤務実態を調査しているが、複数の省庁が「勤務状況が把握できていないことは、制度上考えづらい」としている。
とはいえ、現場での実態はその通りではない。ある省庁の職員は「毎日、出勤簿を書いていない部署もあるようだ」と話す。
「人事課が点検する前にまとめて記入したり、担当者にハンコを預けてまかせっぱなしにしたりする部署もあると聞いた」
という。
国家公務員はいまだに紙の出勤簿での管理が基本になっているが、地方公務員は自治体によってやり方が異なる。たとえば東京都の場合は、出退勤時にICカードを端末にかざしてデータを記録し、出張時などはネットワーク上で管理している。