三井不動産グループが販売した横浜市都筑区の大型マンション「パークシティLaLa横浜」で、建物を支える杭の一部が強固な地盤(支持層)に届いておらず、建物が傾いている問題が発覚した。
住民らでつくるマンションの管理組合は、販売元の三井不動産レジデンシャルに対して、早急に安全対策を実施することや、契約の解除や風評被害による資産価値の減少分の補てんなど入居者が必要とする、すべての補償に応じるよう求めている。
「杭打ち」の工事にデータの書き換えなど
「パークシティLaLa横浜」は、三井住友建設が施工。三井不動産レジデンシャルが2006年に販売をはじめた。最高12階建てで、住居棟4棟に700世帯以上が入る大型物件。建物の傾きが確認されたのはこのうちの1棟で、11階建て86戸で売り出された。
2014年11月に住民が別の棟への渡り廊下の手すりがずれていることに気づき、三井不動産が調べたところ、建物の片側の手すりが2.4センチ、床面が1.5センチ低くなっていたという。
さらに詳しく調査したことで、傾いたマンションの合計52本の杭のうち、28本の調査を終えた時点で、6本の杭が地盤の強固な「支持層」に到達しておらず、2本も打ち込まれた長さが不十分であることが判明。傾きの原因の可能性があるとみている。
一般に、杭を打ち込むための掘削時に「支持層」に到達したかを判断するためには、施工時にドリルで実際に土を掘削して抵抗値を記録する。しかし、三井住友建設と三井不動産が施工記録を点検したところ、問題の8本の杭のすべてでこうした調査が行われず、虚偽の記録が使われていたことがわかったという。
杭を地盤に固定する工事は、2次下請けの旭化成建材が実施。親会社の旭化成によると、同社はデータの書き換えや転用があったことを認めている。改修などの費用も全額負担するという。ただ、虚偽のデータを使った動機などについては、現在もなお調査中だ。
一方、三井住友建設と三井不動産は2015年10月9日から、住民への説明会を続けている。傾いた建物の安全性について三井不動産は横浜市に対して、「震度7想定での検証を行ったが、倒壊の恐れはない」と報告しているというが、住民にしてみれば気が気ではない。
安全・安心の心配もあるが、風評被害による資産価値の毀損も懸念される。安い買い物ではないし、30年超もの住宅ローンを組んで購入した人も少なくない。急に引っ越すことだってできないことを思えば、住民がイライラするのも無理はないだろう。
三井不動産は、「住民の方にはご迷惑をおかけしていますが、しっかりした是正策を立てたいと考えています。そのためにも、いまは詳しい調査を進めていきます」と説明。住民に示されたスケジュールによると、10月下旬に地盤調査を実施。傾いた建物(1棟)については第三者機関の検証を11月中に行い、改善工事の方法は年内に方向性を示すとされる。工期は「おおむね1年前後ではないか」という。
住民多く、調整が長期化する恐れも・・・
ある不動産アナリストは、「こうした問題は長期化する恐れがあります」と指摘する。原因を突きとめてから、基礎工事をやり直すことで修繕できるのか、新たに建て替えるのか、いずれもしても「最終的には住民が判断することになるからです」と説明する。
「今回(「パークシティLaLa横浜」)の件も、おそらくは建て替えになるのだと思いますが、住民が多いとマンションに対する考え方も異なります。住み続ける人もいれば、売りたい人もいる。風評被害もあって、資産価値が大きく毀損しているので、中古物件として売れなくなる心配もありますから、そんな意見を調整するだけで時間がかかります」
三井不動産レジデンシャルとマンションの管理組合が協議していくことになるが、それぞれの思惑が絡んで、なかなか前進しないということのようだ。
じつは、横浜市では2014年6月にも11階建てのマンションで、建物を支える杭の長さが足りずに傾く施工ミスが、5棟あるうちの1棟(65戸)で見つかった。
この物件では、販売元が「安全性が担保できない」と判断。住民に仮住まいへの転居を呼びかけた。仮住まいの賃料や引っ越しに伴う費用は同社が負担している。
現在、問題のあった1棟65戸には誰も住んでいない。販売元の大手不動産は「個別の事情にあわせて、住民の意向にそうよう対処しています」と説明。マンションの管理組合とも協議を重ねている。