「晩秋の朝、御目覚めいかがですか?」――そんな語りから始まるブログの著者は、神戸連続児童殺傷事件の加害者で「酒鬼薔薇聖斗」こと元少年Aだ。
少年は2015年に入り、手記「絶歌」(太田出版)の出版、ホームページ「存在の耐えられない透明さ」の開設とにわかに行動を活発化させた。そして、今度は有料のブログ「ブログマガジン」(月額800円)を始めると宣言。自身の知名度を「ビジネス」に生かしているとも捉えられかねない行為が物議を醸している。
読者と「魂の触角と触角が絡み合うようなやり取り」をしたい
ブログマガジンのタイトルは「元少年Aの『Q &少年A』」。2015年10月12日付けでFC2ブロマガから「創刊」され、現在のところ一部の内容が無料公開中だ。冒頭、「おはようございます。元少年Aです。晩秋の朝、御目覚めいかがですか?」と語りかけた後、ホームページに寄せられた質問と自身の回答を列挙している。
また、ホームページではお馴染みとなった「ナメクジ」の絵も所々に登場する。ナメクジの触角の先にある大きな目から涙のような液体が流れている様子や、人間の頭部とナメクジの触角がつながっている様子を描いたものなど、いずれも「不気味」だ。
元少年Aの説明によると、ブログマガジンの内容は元々ホームページの読者質問コーナーに収まる予定だった。しかし、読者から「真摯な内容のメール」が多く寄せられたため、「元少年Aとよりディープに、魂の触角と触角が絡み合うようなやり取りができるよう、新たに別な場所を設けることにしました」という。ちなみに、次回発行日は10月26日だという。
元少年Aが手記、ホームページに続いて繰り出した「一手」に、ネットではさまざまな見方がある。
「少年法で守られている内に派手な事件起こしておけば出所後にこれだけ稼げるのか」
「彼に金儲けをさせてはいけない。スターにしてはいけない」
といった厳しい意見が多数を占める一方、
「(元少年Aは)法律上の手続きを踏んで社会復帰している」
「ユーモアやお茶目さもある」
と好意的な声もある。
「世間的に今は『WANTED!!』扱い」
質問を寄せた人の名前は基本伏せられているが、フリーライターの渋井哲也さんや碓井真史・新潟青陵大学大学院教授(社会心理学)など、理由は不明ながら公開された人もいる。
渋井さんは神戸連続児童殺傷事件の発生当初から広まっていた「元少年A冤罪説」への感想を質問し、是非会って話がしたいと持ちかけている。
これに対し元少年Aは、「僕は自分のやった行為の鮮明な記憶をほとんど身体器官の一部のように知覚しているため、『冤罪』といわれてもピンとこない」と回答。取材依頼については「大きなリスクを冒してまであなたに会いたいと思えるようになれば、まったく実現不可能というわけではありません」と前置きしつつも「世間的に今は『WANTED!!』扱いですので」と拒否する姿勢を示した。
また、質問内容と無関係ながら、渋井さんが手掛けた「オウム真理教(現アレフ)」の元代表、麻原彰晃こと松本智津夫死刑囚の三女・松本麗華さんへのインタビュー記事にも言及し、「同じ世紀末を特殊な環境で過ごした同年代の者として、自分自身の『生きづらさ』と向き合うヒントになるかもしれません」と感想を述べた。
一方、碓井さんは元少年とナメクジの関係について、「(ナメクジは)あなた自身の象徴なのでしょうか」と質問した。
しかし、元少年Aはこの質問に答えていない。代わりに、碓井さんが15年9月10日にネットで発表した「存在の耐えられない透明さ」の分析記事をふまえ、「人間全般への理解が他の人たちよりも一段深い方なのだなと、素直に感動した」と碓井さんを賞賛している。