梅毒の流行が加速している。2015年の全国の報告件数は9月13日までに1701件で、3か月あまりを残して2014年の1661件を超えた。1950年の12万件に比べれば激減はしているが、2011年から増加に転じて5年連続で上昇カーブを描いている。過去25年で最悪となる可能性が強い。
梅毒はトレポネーマという病原菌が性行為を通じて皮膚や粘膜から侵入して感染する。症状は「3週間」「3か月」「3年」がポイントで、感染から3週間後に感染した箇所に痛みのないしこりが現れる。3か月後には全身の皮膚にピンクのブツブツが現れてくる。特効薬のペニシリンで治療できるが、その後は潜伏期に入り、放置しておくと、約3年後あたりから全身の臓器に腫瘍が現れて、脳にも障害が出て死に至ることが多い。
国立感染症研究所などによると、流行を病期別にみると、しこりやブツブツが出る早期や、症状の出ていない人が増えているのが特徴だ。これは、新規の患者や治療をしないまま潜伏期に入ってしまった患者が多いことを示している。
これまでは患者の8割は男性で、男性の同性同士からの感染が多く、女性の患者は男性との性行為によって感染する例がほとんどだった。ところが、ここ数年は女性の患者も増えて、男性も女性との接触から感染するケースが多くなっている。つまり、男性から女性へ、そして女性から男性へという悪循環に陥っているというのだ。