ランニングは健康づくりに一番いい有酸素運動といわれる。しかし、ゆっくり走るジョギングでさえ、「きつそう」「苦しいのは苦手」と敬遠する人が多い。そんなぐうたらな人にもお勧めなのが、スロージョギングである。なにしろ「歩いている人を追い越してはいけない」というほど遅いスピードで走るのだ。
提唱者の福岡大学スポーツ科学部の田中宏暁教授のサイトによると、運動経験ゼロの人でも始められるという。走り方はこうだ。
歩幅はなるべく狭く、着地は足の前の部分から
田中さんがまず挙げるのは「ニコニコペース」である。息が上がらないように走っている最中に笑ったり、お喋りしたりできる余裕のあるペースだ。普通の人はゆっくり歩くと時速4キロ。急ぎ足で6キロだ。初めての人は時速4~5キロ程度でいい。歩幅はなるべく狭く、靴の長さの半分ほど。チョコマカチョコマカとペンギンのように小刻みにリズムよく走る。
着地する時、足の前の部分(指の付け根)が地面に着くようにすることが大事だ。駅伝選手のように、速く走ろうと大きな歩幅でかかとから着地すると、膝に負担がかかり痛めてしまう。走る前に立ったまま軽くジャンプしよう。足の前の部分から着地するのでコツをつかめる。
姿勢は腰を高くして背筋を伸ばす。アゴも上げる。足が前に出やすくなるし、視線が上がるので周囲の景色を楽しめる。頭から足まで真っ直ぐ一直線になって走る。テルテル坊主のように頭のてっぺんで釣られるイメージだ。肘は軽く曲げるだけ。速く走らないから腕を振る必要はない。呼吸も意識せず、口を開けたまま。腕の振りも呼吸も自然にまかせればいいのだ。
60歳で始めてフルマラソン完走も
初心者は、横か前を人に歩いてもらうといい。その人を追い越さないよう走るのだ。「こんなに遅いなら歩いた方がいいのでは?」と最初は戸惑う。しかし、ゆっくりでも走ることで両足が宙に浮くため、ウォーキングでは使われない体幹の筋肉や太ももの前面の筋肉が鍛えられる。骨も丈夫になるし、消費カロリーも同じ速度のウォーキングの2倍になる。
くれぐれも無理をしないこと。「頑張ってはいけない。初心者が一番陥りやすいのは一生懸命やりすぎて膝を痛め、ランニングをやめてしまうことです」と田中教授。5分走って疲れたら5分歩こう。目標は1日にトータルで30~60分だ。慣れて体力がついてくると、「ニコニコペース」が時速4キロ→6キロ→8キロ......と速くなっていく。「ゆっくり走ると速くなる」といわれるゆえんだ。
実際、60歳からスロージョギングを始めて、フルマラソンを完走した人も多い。ゆっくり走ると、「やる気脳」といわれる記憶・思考・集中力に働く前頭前野と、認知機能をつかさどる海馬が活性化されるという研究成果がある。まずは1日15分程度から始めたい。