紫外線を浴び続けると、肌の老化や健康に害が及ぶ――。近年ではこの事実が知られるようになったためか、女性だけでなく男性向けの日傘や日焼け止めが登場するなど、紫外線対策が広まっている。
ただ紫外線は、大人よりも子どもの方が影響を受けやすい。深刻な病気につながりかねないだけに、注意が必要だ。
紫外線カットの子ども用サングラス、日本の利用者わずか
世界保健機関(WHO)によると、18歳未満の日焼けは皮膚がんや白内障の発症リスクを高めたり、免疫系の機能低下を引き起こしたりするという。またこれまでの調査から、幼いころに浴びた紫外線の量と、体への影響の強さには関連性があることが明らかになってきた。
目の影響については、白内障による失明のうち20%は紫外線によると考えられている。米国やオーストラリアでは、子ども用のUVカットサングラスが普及し、紫外線対策が進んでいる。
日本ではどうか。2015年3月、サラウンド社(東京・新宿)が20~40代の母親1000人を対象に実施した「子どもの紫外線ケア」に関するアンケートでは、76%が「子どもの目を紫外線から守る必要がある」と回答した半面、70%がWHOによる「紫外線が目の健康に及ぼす影響」について「今まで全く知らなかった」と答えた。子どもへの紫外線対策として、「外出時にできるだけ帽子をかぶらせる」「UVカットクリームを塗布する」についてはそれぞれ57%、34%が「現在やっている」と回答したが、UVカットサングラスを装着させているのはわずか6%にとどまった。
2015年4月18日付の産経新聞電子版は、金沢医大の佐々木洋教授(眼科学)が、アフリカ・タンザニアで実施した紫外線と眼疾患の関係を探る疫学調査の結果を紹介した。一般的に、アフリカの人は視力が良いと思われており、調査した小中高校の231人の視力は、日本の調査データと比較して良好だった。ところが、紫外線が原因とされる眼疾患「瞼裂(けんれつ)斑」の発症率は、中高生で100%、小学生を含めた全体でも97.3%で、日本の23.0%を大きく上回ったという。記事によると、タンザニアの紫外線強度は日本の2倍以上だが、子どもは屋外での活動時間が長い。目が浴びる紫外線量は、日本の3.3倍だそうだ。
外で遊ぶときは日陰、つばの広い帽子をかぶせる
皮膚への影響も見逃せない。日本小児皮膚科学会は、紫外線をたくさん浴びすぎると将来、皮膚がんを起こしやすくするとして、赤ちゃんのころから注意してほしいとウェブサイト上で呼びかけている。
例えば、1日のなかで紫外線量がもっとも強くなる10~14時は、できるだけ長時間屋外で活動するのを避ける、外で遊ぶ場合は日陰を選び、日なたに出る際はひさしや屋根、パラソルの下に行く、つばの広い帽子をかぶせ、衣類は肌の露出が少なくて目の詰まった布でできているものを着せ、紫外線を反射しやすい白い色の服を勧めている。
近年ではUVカットの子ども服も販売されており、対策のひとつとして有効だ。