江戸川乱歩や谷崎潤一郎はギリギリ公開?
前出の著作権情報センターによると、「TPPの大筋合意を受けて、これから国内で法改正などを整備します。そのため、実際の運用がはじまるまでは2年ほどかかると思いますが、おそらく現在、すでに保護期間(50年)が切れている作品については(法の不遡及原則により)そのまま無料で読むことができます」と話しているが、「(青空文庫の蔵書は)相対的に数は減ることになります」と説明する。
つまり青空文庫の蔵書の多くを占める、森鴎外や夏目漱石、芥川龍之介、さらには太宰治(1948年没)や林芙美子(51年没)、坂口安吾(55年没)、永井荷風(59年没)など、明治から昭和初期の作品については無料で読めるが、これから「50年」を迎える著作者の作品は「70年」に延びることになるわけだ。
たとえば、著作権の保護期間が2016年に切れる江戸川乱歩や谷崎潤一郎(65年没)や、2017年に切れる亀井勝一郎(66年没)の作品はギリギリ公開できるかもしれないが、2018年に期限を迎える山本周五郎(67年没)や2021年の三島由紀夫(70年没)、2022年の志賀直哉(71年没)、2023年の川端康成(72年没)などの作品を、青空文庫で読むにはもう20年待たなければならないことになる。
じつは青空文庫は2014年9月に、TPPによる著作権保護期間延長が行われた場合の青空文庫の対応を示していて、そこでは「著作権保護の国際標準はヴェルヌ条約で定められた『50年』である」として「反対」を唱えている。
著作権情報センターは、「ヴェルヌ条約にあるのは『最低』50年ということです。この問題は国内でも以前から(延長が必要との)議論がありました。それが決まらなかった。先進国で『50年』なのは日本だけ。いわば時代の流れです」と、今回のTPPでの決着に理解を示している。
とはいえ、インターネットには、
「まじか、谷崎の著作権切れるのに......」
「著作権70年になるとしたらいつから改定されるんだろう。来年(2016年)からだと江戸川乱歩の作品はあと20年待たなきゃということか」
「著作権保護が70年になるの...... はっきりいってイヤです。今のままにして!」
と、落胆の声は少なくないようだ。
一方、青空文庫は「国内の法整備などをみながら作業を進めることになります」と、保護期間の延長決定に抗うことはしないものの、「たとえば米国で日本文学を研究している人にとっては、保護期間の延長で入手できなくなる作品が出てくることになります。他の意見を聞くことなく、経済のモノサシだけで測って(延長が)決められたことに疑問を感じています」と、呆れぎみに話している。