世紀の発見はゴルフ場で採取した土から生まれた。ノーベル医学生理学賞を受賞した大村智・北里大特別名誉教授(80)が化合物「エバーメクチン」につながる微生物を発見したのは、日本ゴルフ界屈指の名コース「川奈ホテルゴルフコース」の土だった。
「土を持って帰るひとが出そう」「このゴルフ場に聖地巡礼する人が急増する予感」。ゴルフ場とノーベル賞、意外な取り合わせにネットは盛り上がった。
「あちこち歩く中でたまたま」発見
「エバーメクチン」を作りだす微生物を発見した土は、1974年に大村さんが静岡県伊東市の川奈ホテルゴルフコースで採取したものだとされる。
受賞会見で大村さんはゴルフ場で土を採取したことについて、
「『大村はゴルフをやるために、(研究を)口実にしている』なんて言われます」
とジョークを飛ばした。
実際はグループを作って各地でサンプルを採取し、「あちこち歩く中でたまたま」微生物を発見したのが、川奈ホテルのゴルフコースの土だったというわけだ。
川奈以外のコースで採取することもあるそうで、米カリフォルニアではラウンドしながら、靴についた土を採取したこともあったという。
ゴルフ場の土が世紀の発見につながったことに注目したのは日本のマスコミだけではない。ノーベル財団による電話インタビューの中でも話題に上がった。インタビュアーの質問に大村さんはハハハッと笑い、
「みんな、私がゴルフ好きだと知っている。見つけたのはゴルフコースではなく、コースのすぐ近く。コースには芝や土、木があり、採取したのは木の近くです」
と話した。
「お土産として土を販売するの?」
川奈ホテルゴルフコースは1928年に作られた、日本屈指の名コース。フジサンケイレディスクラシックの舞台で、「Golf.com」が2013に発表した世界の名コースで71位に選ばれている。
今回の発見を受け、ツイッターなどネットでは、
「ゴルフ場の聖地が増えましたね」
「このゴルフ場に聖地巡礼する人が急増する予感」
「お土産として土を販売するの?」
などと話題になった。
川奈ホテルの担当者は、土を採取したのが40年以上前で当時の状況は分からないとしつつも、「大変光栄なことです」と喜ぶ。
ネット上ではコースに行ってみたいという声が上がっているが、現時点では問い合わせや予約などの反響はまだないという。土を持って帰りたい、という人が今後出てくるかもしれないが、「現時点で土の販売をする予定はありません。あくまでゴルフコースなので」とやんわりくぎを刺していた。