ラグビーのワールドカップで日本代表がサモアに圧勝した。
日本でのラグビーブームはさらに加速している。よみがえった感のある伝統の競技はこのまま突っ走ることができるか。
メディアも大騒ぎ、ジャージは売り切れ
日本26-5サモア。第3戦の結果である。
世界ランキング12位の日本が11位のサモアに圧勝、完勝した。前半を20-0と、パワーの相手にラグビーをさせなかった。サモアの焦りは、序盤で2選手が10分間試合から除かれる「シンビン」(一時的退出)という異常さで反則をくり返したことに現れた。
「ジャブを打ち込むように戦う」
これがヘッドコーチのエディの作戦だった。その通り、五郎丸のPGで先行。これを機に日本のペースに巻き込み、チャンスを逃すことなく確実に得点を重ねた。
「練習通りに試合ができた。相手にずっとプレッシャーをかけ続けたのが勝因だ」
主将のリーチは胸を張って振り返った。
第1戦の南アフリカに勝ったとき、「奇跡の勝利」「歴史的勝利」といわれたが、今回の2勝目は堂々たるものだった。
日本のメディアは大声で騒ぎ、ファンは絶叫。日本代表モデルのジャージは売り切れ、といった状態である。
快進撃というべきだろう。1勝しかしたことのない、これまでのワールドカップの戦いを振り返れば、さらに「超」を付けてもいいと思う。
ラグビーがこれほど騒がれるのは久しぶりのことである。全国紙が大きくページを割いて取り上げ、テレビ各局もトップニュースで扱った。
「アマスポーツの権化」
そう言われてきたのがラグビーだった。かつて新日鉄釜石、神戸製鋼所が、それぞれ日本選手権を7連覇したころは、ラグビーは冬の最大のイベントで、大学選手権も含め国立競技場のスタンドはファンで満員となった。毎年1月15日は社会人-大学による日本選手権が行われ、「成人式の日はラグビー」という歳時記だった。
それも昔。サッカーがJリーグ誕生でプロとなると一転、ラグビーは年々影が薄くなった。日本選手権の方法を変えるなど様々な政策を出したものの、メディアへの露出度はサッカーに後れをとっていた。
ハードな試合、ファンには間のあいた日程
ラグビー界としては、今回のワールドカップにおける日本代表の健闘を、なんとしてでも生かして人気復活を果たしたいところだ。
ただ、ラグビーの試合はハードだけに、試合間隔を長くしなければならず、どうしてもファンの方にも間があいた感じになる。プロ野球やJリーグとの違いを乗り越えることができるかどうか。
2020年開催の東京オリンピックに向けた新国立競技場の建設について設計の白紙見直しがあった。当初は五輪の前にラグビー・ワールドカップ日本開催の開会式をそこで行う計画だったが、建設そのものが間に合わなくなり、ラグビーはその煽りを受け、最大の被害者の立場になった。
その直後の日本代表のワールドカップでの大活躍である。ラグビー関係者は、「してやったり」と喝際を叫んでいることだろう。
「よみがえるラグビー」から「よみがえったラグビー」へ。
来年はどんなラグビー界、スポーツ界になっているか。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)