「トマトが赤くなると、医者が青くなる」ということわざが西洋にあるほど、トマトは健康にいい野菜として知られてきたが、最近、ダイエット効果が期待できることもわかった。
2012年2月、京都大学の河田照雄教授らの研究チームが、トマトの中に脂肪の燃焼を促進させる働きがある新種の脂肪酸が含まれていることを突き止めた。「13オキソODA」である。「13オキソODA」を混ぜたエサを肥満したマウス8匹に4週間与えると、混ぜないエサのマウスに比べて、血液中の中性脂肪の量が減ったという。マウスの1日の「13オキソODA」の量は、人間に換算すると、トマトジュース600㏄に相当する。缶サイズなら3本分だ。人間への応用はまだだが、肥満解消の新しい有効成分として期待が高まっている。
美肌にうれしいリコピンの効力はビタミンEの100倍
トマトは、ブロッコリーと並ぶアンチエイジングの「最高の若返り野菜」といわれる。トマトの赤のほとんどがリコピンという色素成分だ。リコピンは体の老化を進める活性酸素を除去する抗酸化物質で、その効力は抗酸化物質の代表格のビタミンEの100倍だ。血糖値を下げて血液の流れをよくする働きがあるので、動脈硬化や脳卒中、糖尿病など生活習慣病の予防に効果がある。リコピンには、ほかにも以下のように多くの健康効果があるのだ。
(1)がん予防。リコピンを摂取した人としない人とを比較した疫学調査では、肺がんと前立腺がんのリスクが減った。
(2)疲労軽減。トマトジュースを1時間の運動前と後でマウスに飲ませる実験では、前に飲んだマウスの疲労度は、後に飲んだマウスの7割だった。
また、女性にはうれしい次のような効果も!
(3)美白作用。英国の大学で、女性20人にトマトを12週間毎日食べ、紫外線を浴びてもらう調査をしたところ、トマトを食べた女性は食べなかった女性より約3割日焼けが少なかった。これは日焼け止めクリームや日傘が紫外線を防ぐ効果と同じだ。また、食べた女性の皮膚のサンプルをとると、コラーゲンが増えていた。リコピンにはシミの原因となるメラニンの生成を抑える働きもあり、シワやたるみも減らしてくれるのだ。
トマトには、ほかにも最近注目されているビオチンというビタミンが含まれている。コラーゲンの生成を助けるばかりか、髪の抜け毛や白髪を改善して、肌と髪の健康を維持する働きがあるといわれる。つくづくトマトは「女子の味方」なのだ。
料理のコツは「加熱+油と一緒+乳製品も」
トマトの栄養をしっかり吸収するには、どういう食べ方をしたらよいだろうか。まずトマトの選び方・保存方法から。真っ赤に熟しているものを選ぼう。ヘタと逆のお尻の側を見て、放射状にスジが入っているのがベスト。風通しのよい場所で常温保存すると、熟成を促し、リコピンも増える。料理の仕方には3大ルールがある。
(1)加熱する。リコピンの吸収を最大限にするにはコツは加熱だ。リコピンは熱に強い。加熱するとトマトの細胞膜が壊れ、中に含まれているリコピンが吸収されやすくなる。また、焼くことで旨み成分のグルタミン酸が凝縮され、コクが深まる。ただし、加熱によってトマトのビタミンCが失われるので、ビタミンCを含む食材と一緒に食べることが大切。
(2)油と一緒に。リコピンは脂溶性の栄養素なので、油と一緒に摂ると吸収されやすい。揚げたり炒めたりの油調理をしなくても、トマト煮スープや和え物などに、オリーブやゴマ油をひとたらしするだけでも十分だ。
(3)乳製品と組み合わせて。油同様、チーズやヨーグルトなどの乳製品との相性が抜群で、リコピンの吸収率がグンとアップする。手軽に食べるなら、チーズトーストにトマトを載せたり、焼きトマトに粉チーズを振ったりするだけでもよい。
栄養豊富なミニトマトをおやつ代わりに!
ところで、今日のサラダは普通のトマトにしようか、ミニトマトにしようか、迷ったことはないだろうか。実は、ミニトマトの方が栄養価は高いのだ。もともとミニトマトの方が野生の原種に近く、品種改良して大きくしたのが普通のトマト。たとえば100グラムあたりのリコピンの含有量は、普通のトマトが210ミリグラムなのに対し、ミニトマトは290ミリグラムである。だから、ミニトマトを間食代わりにおやつ感覚でつまむのもアリなのである。