AGF(味の素ゼネラルフーヅ)が主力ブランド「ブレンディ」の商品プロモーションとして公開していたウェブ限定ムービーが、インターネット上で賛否を巻き起こしている。
動画は、特濃牛乳を100%使用したカフェオレの魅力を「擬人化した牛たちの進路発表会」というユニークな設定で表現したもの。公開は1年ほど前だったが、2015年10月に入ってから注目を集め、波紋を広げた。突然の騒動に、同社は戸惑っているようだ。
外国人ライター「日本で気味の悪いCMが作られている」
動画の舞台は、牛の学園の「卒牛式」。鼻輪を付けた制服姿の生徒たちは、自分の番号が呼ばれると立ち上がり、校長からそれぞれの進路が書かれた「卒牛証書」を受け取る。行き先は動物園、闘牛場などさまざまだが、皆が望み通りの道に進めるとは限らず、食肉になることが決定して泣き崩れる生徒もいた。
そうした中、主人公「ウシ子」の進路発表の瞬間がやってきた。ウシ子はこれまで「特別な存在」となるために、たゆまぬ努力を重ねてきたのだった。校長から告げられた行き先は「ブレンディ」。その瞬間、会場からは大きな拍手が沸き起こった。
「濃い牛乳を出し続けるんだよ」
という校長の言葉を受け、ウシ子は感極まりながらお辞儀する。そんなラストシーンとともに「ブレンディ ミルク広がる挽きたてカフェオレ 特濃牛乳を100%使用しています」との商品PRのナレーションが流れ、2分半の作品は終了する。
動画が公開されたのは2014年11月と、1年ほど前のことなのだが、9月に開催された広告祭「スパイクスアジア2015」でブロンズ賞を受賞したことで、再び日の目をみることとなった。すると9月下旬には、ある人物によって英語字幕付きの同動画がYouTubeに投稿された。
これを日本在住の外国人ライターが発見し、10月1日、ツイッターで「日本で気味の悪いCMが作られている。意味が分からない...」と批判的なコメントを添えて紹介した。このツイートなどがきっかけとなり、動画は大きな注目を集めることとなった。
AGF、騒動受け「反省するところも多いです」
同ライターはどうやら、主人公の「胸」に関するシーンに不快感を抱いたようだ。主人公のウシ子は見るからに巨乳であり、回想シーンでは、胸を強調したようなシーンもみられた。
白いTシャツを着たウシ子が、「胸を張って」という母の言葉を思い出しながら、大きなおっぱいを上下に揺らしてランニングする姿がスローモーションで映し出されていた。
あるツイッターユーザーから「おっぱいが揺れるシーンは最悪」といった声が届くと、ライターは「僕も最初はかなりクリエイティブだなって思ってたんだけど、そのシーンに差し掛かった時は一体何が起きたのかと...」と見た時の衝撃を振り返った。
動画は日本のネットユーザーの間でも話題になり、英語字幕付きの動画は2日17時時点で53万回以上再生されている。ツイッター等には、
「悪趣味にもほどがある」
「これを見て『飲みたい!』って思う人いないだろ...」
「企業人として、いや人間としてこのCMを通した人間の感性を疑う」
といった批判が少なくない。市民団体「ポルノ被害と性暴力を考える会」のツイッターアカウントも問題視するツイートを連投している。
一方、こうした批判に対しては、
「ユニークで良くない?」
「むちゃくちゃ面白いじゃないですか」
「表現に対する寛容さが少ない人が相変わらず多いね」
「え...ブレンディのCM何がダメ...なの!?」
といった声も多く出ており、賛否双方で盛り上がりをみせている。
10月2日、AGFの広報担当者はJ-CASTニュースの取材に応じると、「ネット上のこうした声につきましてはすでに把握しており、大変驚き、戸惑っております」と話した。
CM公開時には消費者からさまざまな意見が同社に寄せられるそうだが、この動画の関しては1日以降、突然意見が届くようになったという。もっとも公開時の意見は3件で、こうした反応が出ることは予測していなかったそうだ。
その上で「見る方によってそれぞれお考えがあると思いますが、反省するところも多いです」とコメント。なお、特設サイトや公式動画の公開は契約の関係で8月ごろに終了しているといい、「今回のご意見をしっかり受け止めて検証し、今後に生かしていきたい」とした。