大阪中学校「10段ピラミッド崩壊」の衝撃動画 専門家は「リスク大きく、やめるべきだ」と厳しく批判

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   大阪府八尾市の市立中学校で行われた体育祭で組体操の「人間ピラミッド」が崩れる事故が発生し、その様子を映した動画が話題となっている。男子生徒がよろめきながら最上段向けてよじ登る場面から、ピラミッドが一気に崩れる場面まで、事故の一部始終が収められている。

   動画を見たネットユーザーは「狂気の沙汰」などと怒りの声を上げた。組体操問題に詳しい専門家も「巨大なリスクを抱えた人間ピラミッドはやるべきでない」と警告する。

  • 最上段の生徒が立ち上がろうとしたそのとき、一気に崩れた(画像はYouTube動画のスクリーンショット)
    最上段の生徒が立ち上がろうとしたそのとき、一気に崩れた(画像はYouTube動画のスクリーンショット)
  • 最上段の生徒が立ち上がろうとしたそのとき、一気に崩れた(画像はYouTube動画のスクリーンショット)

崩れた瞬間、観客席の歓声は悲鳴に変わった

   事故は2015年9月27日の体育祭で発生。1年生から3年生の男子生徒約150人が参加した10段ピラミッドが崩れ、6人が重軽傷を負った。1人は腕の骨を折る重傷だ。八尾市教育委員会は事故をうけ、市内の学校にセーフティーマットを活用するなど安全策を徹底するよう通達した。

   そんな事故の様子は30日頃、現場に居合わせたとみられる人物がYouTubeに投稿した。ピラミッドを横から撮影した動画で、最上段が完成する直前から崩壊の瞬間までを収めている。

   歓声と太鼓の音が渦巻くグラウンド、9段まで積み上がったピラミッドの最上段目指し、1人の男子生徒がよじ登っていく。しかし「足場」は悪そうで、手を掛けたり、足で踏ん張ったりするたびにぐらつく。なんとか最上段までたどり着き、よろめきながら立ちあがろうとしたその時、「悲劇」は起こった。ぐらついていたピラミッドが突然、勢いよく中心部から崩れたのだ。

   わずかな砂ぼこりがあがり、観客席の歓声は悲鳴に変わった。補助役としてピラミッドのそばに配置されていた教員らが駆け寄り、生徒の様子を確認する。しばらくすると、1人の教員が腕を押さえた生徒を伴ってグラウンドを後にした。動画はここで終わる。

   動画が公開されると、ツイッターには

「狂気の沙汰だ」
「『事故』とは言いたくない。事件だろ」
「さっさと(人間ピラミッドを)廃止にして欲しい」

など怒りの声が数多く寄せられた。

背中には200キロ以上もの重さがのしかかる

   専門家は事故をどう見るのか。組体操事故に詳しい名古屋大学大学院の内田良准教授(教育社会学)はJ-CASTニュースの取材に「(学校や教員は)リスクに向き合う力が無いと言わざるを得ない」「補助役の教員を周りに配置する、セーフティーマットを活用する、という『安全策』は何の意味もありません」と学校や教員、市教委を厳しく批判した。

   ピラミッドはほぼ内側に崩れるため、周囲に教員を配置する意味はない。セーフティーマットも後方へ落下する生徒のけがを軽減するかもしれないが、根本的な解決法にはならない。「これでは『言い訳のための方策』とみなされても仕方ありません」――内田さんはそう見る。

   事故を起こした10段ピラミッドの場合、一番負担の大きな生徒は背中におよそ3.9人分、200キロ以上もの重さがのしかかる。そのため崩れた時のエネルギーは凄まじく、生徒が脊髄損傷など重い障害を負った事例も過去にあるようだ。

   さらに訴訟へ発展した場合も、圧倒的に「学校(教員)側に分が悪い」と指摘する。組体操事故をめぐる訴訟はほとんど学校(教員)の敗訴に終わっており、「組体操事故への関心の高まりを考えると、もはや『リスクを知りませんでした』では済まない状況になっています」とした。

   では、これだけリスクの高い人間ピラミッドをなぜ学校側はやり続けるのか。内田さんは「体育祭で大きなピラミッドを披露すると、見にきた保護者は拍手喝采、賞賛しますよね。そうなると、教員もやめられなくなるんです。ピラミッドが作り出す『感動』が負の面を見えなくしているんです。保護者と教員がピラミッドの巨大化を推進してきたと言っても過言ではありません」と話し、この状況を「感動の呪縛」と呼んだ。

   取材の最後に内田さんは、「巨大なリスクを抱えた人間ピラミッドはやるべきでない」と強く語った。

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