石炭火力発電に難問出現? 燃やした灰から強い放射能

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   米国の3大石炭生産地のすべてから、石炭を燃やした後の灰から高濃度の放射性物質が検出されたという研究が発表され、話題を呼んでいる。通常の石炭火力発電所では、灰がそのまま空気中に放出されることはないというが、研究では灰の埋め立てや貯蔵方法には注意が必要だと指摘している。

   日本では「原発ゼロ」に近い環境が続く中、老朽化した石油火力発電所の代わりにコスト競争力が高い石炭火力を新設する動きも進んでいる。今回の研究は、こういった動きに一石を投じる可能性もありそうだ。

  • 石炭を燃やした後の灰をめぐる問題が指摘されている
    石炭を燃やした後の灰をめぐる問題が指摘されている
  • 石炭を燃やした後の灰をめぐる問題が指摘されている

灰になると放射能レベルは石炭そのものの10倍に

   研究は米デューク大学を中心とするグループが2015年9月2日付で、米国化学会の雑誌「環境科学と技術」に発表した。今回の調査は、15年10月に米国で石炭灰の処理に関する規則が施行されるのを前に行われた。現時点では、米国の石炭灰の最終処分場では放射線量の測定は行われていないという。

   調査では、イリノイ盆地、アパラチア盆地、パウダー川盆地の3か所から複数の石炭と石炭灰のサンプルを集め、放射性元素を測定。その結果、イリノイ、アパラチア、パウダー川の順に放射能レベルが高かった。いずれも放射能レベルは通常の土壌より5倍、石炭そのものよりも10倍以上だった。燃焼の際に放射能が圧縮されるのが原因だ。

   デューク大学の発表では、

「石炭灰が環境や健康にもたらすリスクへの懸念が浮上している。現時点では石炭灰には規制がなく、全米の石炭火力発電所のため池や埋め立て地面に貯蔵されている」

と指摘している。これまでにも、石炭灰にはセレンやヒ素といった汚染物質が含まれていることは知られていたが、今回の研究では、

「石炭を燃やした場合、放射性同位体は石炭灰の残りかすの中で濃縮され、鉛-210は化学的に揮発性になり、飛灰(ひばい)の粒子に付着する」

などと説明。当然、粒子自体はきわめて小さいが、固まりとして貯蔵した場合には注意すべきだとしている。

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