2020年の東京五輪を巡っては、新国立競技場以外にも施設整備で「ムダ遣い」が指摘されるケースが相次いでいる。工夫すれば、もっと安くできるというのだ。
ボートやカヌーといえば、熱心な愛好家はいるが、サッカーや野球ほど国民的スポーツとはされていない。
都の施設整備費は、1000億円ほども膨らむ
ところが、東京都が臨海部に建設計画を進めている競技場は、491億円もかかる予定になっている。メイン会場の新国立が見直し後に1500億円ほどとされたため、その3分の1も整備にお金がかかる計算だ。
競技場名は、「海の森水上競技場」で、計画では、コースのほかに、2万4000席の観客席やボートなどの倉庫、波を防ぐ堤防の締め切り堤を建設する。五輪に立候補した当時は、69億円と見積もられたため、7倍ぐらいにコストが跳ね上がったことになる。
都は現在、五輪の施設として、7つを新設、2つを改修する計画を示している。
立候補時は、施設整備に1538億円を計上していたが、開催決定後には、3倍近い4584億円にも膨れ上がった。前出のボード・カヌー競技場に至っては、10倍以上の1038億円とまで試算していた。
それが既存施設も活用する方針に変えてから、2469億円にまで削減した。それでも、立候補時より1000億円ほど増えているのだ。
そんな状況に対し、2015年9月27日放送のTBS系情報番組「噂の!東京マガジン」で、競技関係者が苦言を呈した。
あるボート関係者は、海の森水上競技場では、近くに風力発電施設があるほど海風が強く、その影響が心配だと漏らした。また、ボート競技は淡水でやるのが普通で、海水だと浮力が出て選手が戸惑うともいう。そのうえで、埼玉県戸田市に彩湖という淡水で風の弱い場所があり、ここなら50億円ぐらいで整備できるはずだと指摘した。
東京都「当初は本体だけの費用を計上した」
また、番組では、東京都江東区に新設するアクアティクスセンターについても、関係者らから難点が挙げられた。ここは、競泳や飛び込み、シンクロなどが予定されているが、わずか500メートル離れたところに既存の巨大施設「東京辰巳国際水泳場」があるというのだ。
それにもかかわらず、アクアティクスセンターは、立候補時の321億円から現在は倍以上の683億円にまで建設費が跳ね上がっている。
東京都の大会準備部では、J-CASTニュースの取材に対し、計9施設の整備費が1000億円も上回ったことについて、こう説明した。
「立候補時は、周辺の整備費などは含まず、まず施設の本体だけの費用を挙げました。それは、物価の上昇や消費税の引き上げがはっきりしておらず、関係者間の調整が必要なこともあったからです。類似施設や過去の事例を参考にしたため、周辺整備費などの詳細を調査するのは困難でした」
海の森水上競技場の建設費が7倍ほどにもなったことについては、こう言う。
「締め切り堤の整備にお金がかかるのが、大きな要素です。現地の地質調査でその構造を再検討し、静穏な水域にするために必要でした。なお、海風については、調査して適切な対策を行う予定です。ボートやカヌーについては、海域で競技を行うこともあり、東京湾の奥なので塩分も低いと考えています」
彩湖に競技場を作ることについては、「50億円でできるものではなく、やり方次第で491億円を上回る可能性があります。野球場や児童遊具のある湖岸を大規模に掘削しなければならないので、相当巨額のお金がかかるからです」と説明した。
アクアティクスセンターについては、東京辰巳国際水泳場が運河に沿っており、大規模な観客席を作るための拡張が難しかったため新設することにしたと言っている。