群馬県太田市は、2015年10月からスタート予定だった、ふるさと納税の高額寄付者への返礼品として富士重工業のスバル車を贈ることを断念した。富士重工業側が提供の見送りを申し出たのが理由だ。
太田市の清水聖義市長が2015年6月の記者会見で、製造拠点を市内に構える富士重工業のスバル車を贈る考えを表明していた。東京23区や政令指定都市、中核市の住民で500万円以上の寄付をした人を対象に、350万円相当のスバル車「レヴォーグ」「WRX S4」などを返礼品にしようとする計画だった。
地味な地ビールだけの返礼品しかなく
これまでの太田市の返礼品は地ビール(寄付2万円以上で2本セット、3万円以上で3本セット、5万円以上で6本セット)しかなかった。全国の各自治体が肉類、魚介類、米、酒類などの地元特産品や、ダイビング、乗馬といったレジャーチケットなど豪華な返礼品を準備しているのに比べると地味な印象はぬぐえなかった。
そこで返礼品の「目玉」にしようと、スバル車の贈呈を計画。太田市は富士重工業の企業城下町であり、その関連、取引企業も多く、都市対抗野球にも「太田市」の代表として毎年のように出場するなど、まさに市が誇る「地元ブランド」だからだった。
自動車が返礼品というのは極めて珍しく、ネット上でも「車を贈るなんてすごい」「聞いたことない」「地元企業のPRだな」などのコメントが並び、世間から注目されるようにもなった。
しかし、太田市との協議の結果、富士重工業側から「難しい」と、車の提供見送りが伝えられたという。
地元企業の富士重工業はイメージ悪化を心配
太田市はスバル車の贈呈対象者として、年収1億円超の人を想定していたとされ、高額納税者の優遇とも受け取られかねない。また、寄付を集めようと全国で返礼合戦となっており、総務省は4月に各自治体に「高額または寄付額に対し返礼割合の高い返礼品」「換金性の高いプリペイドカード等」を贈らないよう要請したところだった。スバル車提供となれば、総務省の要請を無視したことにもなりかねず、富士重工業としてはスバル車のブランドイメージの毀損にもつながると判断したとみられる。
他の自治体が豪華な特産品を返礼品として並べて寄付集めに邁進するなか、太田市としては最大の「特産品」であるスバル車をアピールする絶好の機会でもあっただけに「断念するしかないが、本当に残念」(関係筋)と無念さをにじませている。この間、ネットなどで話題になった分のPR効果はあったかもしれないが。