軽減税率そのものの導入に赤信号?
公明党の反発は強く、財務省案の実現は見通せない状況だ。自民党は公明党に対し、財務省案を軸に検討することを提案したが、公明党が猛反対したため、軽減税率も並行して協議することを受け入れた。自民党は評判の悪い個人番号カードを使わず、専用のポイントカードを使う修正案を検討しているが、公明党は「購入時点で税率が低くなければ軽減税率とはいえない」と、頑として受け付けない構えだ。
財務省については、政府・与党内で「公明党に軽減税率を断念させるための高等戦術なのではないか」(経済官庁幹部)との見方も出ている。軽減税率の制度設計も対象品目の線引きなどで行き詰まっており、財務省案も「ノー」となれば、低所得者を対象に一律額(2015年度は6000円)を配っている現行の臨時的な給付措置を続けざるを得ない。軽減税率導入で税収が減ることを嫌う財務省はそれを狙っているのではないか――との見立てだ。 財務省幹部は「政治が決めること」と静観を装うが、15年末には2016年度の税制改正大綱をまとめなければならず、残された時間は少ない。しかも、自民党内には消費税10%導入と同時での導入は無理、という見方が広がっている。
財務省案であれ、別の軽減税率案であれ、成案を得られない可能性が高まっていることだけは確かだ。