最近驚いたニュースで、ドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の不正がある。報道によれば、米環境保護局(EPA)がVWのディーゼル車で排ガステストの時だけ排ガス量を減らす違法なソフトウェアが使われていたと発表した。
どのようなソフトウェアなのかを想像したくなるが、ユーザー車検を経験した人なら、次のように考えるだろう。ハンドル操作が一定時間ない状態で、車体が動かず、駆動輪の回転が一定間隔で機械的に変化する場合には、「検査中」とソフトウェアが判断して、排気ガスを押さえるモードになる。
「テスト条件に最適化」ソフトを組み込んだ可能性も
こうしたことは、「検査」には珍しくない。例えば、新式のパソコン商品がでるとき、ベンチマークという性能テスト結果があわせて公表される。そして、それが前の商品との性能差になる。商品を一定条件下でテストするわけだが、そのテスト条件に合わせて商品のパフォーマンスを最適化するのは、どこのメーカーでもやっていることだ。
今回のVW事件でも、テスト数値の改ざんであれば問題外だが、EPAの設定したテスト条件が実際の走行条件とあまりにかけ離れていて、それをVWに見透かされて、VWがテスト条件に最適化しているソフトウェアを組み込んだ可能性も捨てきれない。もっとも、EPAに自動車メーカーが勝負しても勝てるはずないので、EPAが不正といえば不正になってしまうだろう。
どうも米自動車市場では、出る杭は打たれるという印象がある。そういえばトヨタもアメリカ市場では安全問題で制裁課徴金を課せられたこともあったが、原因が運転ミスなのか構造上の欠陥なのか釈然としなかった。
VWも、2015年1-6月期の世界販売台数が504万台と、トヨタを抜いて上半期で初の首位に立った矢先の事件だ。