7月は、ある会社を守るために決裂」という噂
ただ、日本の交渉姿勢も、各社ごとに異なる日系メーカーの部品調達率に影響されているとの指摘がある。トヨタ自動車など国内の部品調達比率が高いメーカーは、仮にNAFTA並みに厳しい規制も楽々クリアでき、関税引き下げ・撤廃の恩恵を受けられるが、苦しいのが日産自動車。ルノーとの提携を機に、「ケーレツ破壊」を断行して海外に調達先を多角化したことから、原産地規制が厳しくなると「日本製」といえなくなって関税に関する恩恵を受けられなくなる恐れがあるのだ。マツダも、日系の中では日産に次いで国際的な調達が多いと言われる。このため、7月の閣僚会合の後、「実は(日本は)日産を守るために決裂した側面がある」と一部でささやかれた。
日本のメディアは、7月の時点では自動車の原産地規制問題はワン・オブ・ゼムとして触れる程度で、乳製品でゴネたニュージーランドを批判する論調が目立ったが、さすがに9月の4か国協議と前後して、ようやく自動車を正面から取り上げる報道が出てきた。
TPPの交渉では、自動車や乳製品に加え、知的財産にからむ医薬品の開発データ保護期間などの難題も残っている。日本としては4カ国が今回の自動車分野の協議で合意し、これをテコに他の難航分野の交渉促進につなげたい考えだったが、今のところ狙いは外れた形だ。
カナダの総選挙の行方をにらみ、交渉環境は厳しさを増している。タイムリミットが近付いて、「最悪、合意できずそのまま漂流し、次の米政権誕生まで棚上げ、あるいはそのまま消滅の可能性も否定できない」(関係筋)との悲観論も聞こえ始めた。