業績不振に陥ったワタミが介護事業の売却を進めている。200億円程度とされる売却益を得ることで財務基盤を強化する一方、「祖業」である外食事業の立て直しに専念する狙いとみられる。若者の居酒屋離れも指摘される中、「和民」などの店舗で客足を回復することができるのか。先行きは見通せない状況にある。
ワタミは2015年9月10日、報道各社が相次いで「介護事業 売却へ」と報じたことを受けて、「事業ポートフォリオの再構築について、あらゆる可能性を検討しており、その一環として介護事業の譲渡に関する協議をしている」とのコメントを発表した。売却先として、介護事業の拡大を目指す損保ジャパン日本興亜ホールディングスとパナソニックの名前が浮上しており、金融界では「近く売却先が決まる」との見方が強い。
創業者は多角化の後、参院議員に
「入居者様の幸せのためだけにある」とアピールしてきた介護事業の売却を迫られたのは、主力の外食を中心に業績不振が続いているためだ。2015年3月期には売上高が前期比4.8%減の1553億円に落ち込み、営業損益も20億円の赤字に転落。当期純損益は126億円の赤字となり、2期連続の赤字に陥った。不振の国内外食事業の赤字は36億円に達し、不採算店など100店の撤退を進めても業績悪化に歯止めがかかっていない。決算書には「継続企業の前提に重要な疑義」などと明記され、事業の先行きに黄信号に灯った格好だ。
8月に発表された2015年4~6月期の純損益も15憶円の赤字を計上した。ワタミは決算書で、取引銀行との契約に「各年度末に、2015年3月期末の純資産額を維持する」との文言を盛り込んだことを明らかにしており、同社にとって2016年3月期での3期連続の赤字は絶対避けなくてはならない事態だ。そこで浮上したのが介護事業の売却だった、というのが一般的な見方だ。ただ、目論見通りの売却益を得たとしても、経営立て直しの道のりは険しい。
同社は、現在参院議員を務めている創業者・渡邉美樹氏が1984年、居酒屋チェーン「つぼ八」のフランチャイズ店を出店したのが始まり。その後、業容を拡大し、ノンフィクション作品で取り上げられるなど、業界で注目を集めてきた。多角化も推進し、2004年に介護事業に参入した。