新聞業界、軽減税率適用に必死 財務省「還付案」を各紙が批判、キャンペーンも

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   消費税率が2017年4月に8%から10%に引き上げられるのを前に、負担軽減策として急浮上した財務省の「2%還付案」。すでに自民・公明が合意している軽減税率に代わる案だが、小売店に負担が増えるなど手続きが煩雑になるとして大不評だ。

   日本新聞協会(会長・白石興二郎読売新聞グループ本社社長)も2015年9月17日、還付案を批判する声明を出した。ただ、その内容は「還付案を批判」というよりは「本来の軽減税率制度を導入することを求める」ことに主眼が置かれており、新聞に軽減税率を適用するように改めて求めている。新聞各社は消費税率の引き上げで経営に大きなダメージを受けるとみられており、声明は「ポジショントーク」だと非難されるのは必至だ。

  • 財務省案は新聞協会にも批判されている
    財務省案は新聞協会にも批判されている
  • 財務省案は新聞協会にも批判されている

「本来の軽減税率制度」の導入を求める

   財務省案はマイナンバーを活用して食料品などの支払い代金から増税分2%を事後に還付することを骨子としており、9月10日には与党が財務省案を含めて検討を再開した。

   新聞協会の声明では、

「事業者の事務負担軽減を優先して、その分を消費者にしわ寄せしている」
「消費時点の痛税感の緩和に限界があり、結果として消費を冷やすことになりかねない」

などと批判。「本来の軽減税率制度」の導入を求めた上で、

「わが国の民主主義と文化の基盤となっている新聞(電子媒体を含む)については、知識への課税は最小限度にとどめるという社会政策上の観点から書籍、雑誌等とともに軽減税率を適用すべきである」

と、従来の主張を繰り返した。新聞(電子媒体を含む)としたのは、日経、朝日を筆頭に各紙が有料の電子版に力を入れていることが影響している可能性もある。

読売は13日連続で1面に軽減税率が登場

   新聞業界が声明を出したことで、体裁としては新聞業界として足並みをそろえた形だ。だが、各社の紙面を見ると、社によってかなり温度差があるようだ。

   突出しているのが読売新聞だ。9月5日の初報から18日まで、休刊日の9月14日をはさんで13日連続で1面に軽減税率関連の記事を掲載。その内容も、財務省の還付案に批判的なものがほとんどだ。社説でも2回取り上げた。9月7日には、「軽減税率代替策『面倒くさい』で済まされるか」と題して、麻生太郎財務相が軽減税率で複数の税率を導入することになることを「面倒くさい」と発言したことを非難しながら、

「与党は10%時に食料品や新聞などの必需品に軽減税率を導入し、政治の責任を果たすべきだ」

と新聞に軽減税率を適用するように主張。9月11日の社説では、「消費税10%対策 国民への配慮を欠く財務省案」と題して欧州で軽減税率が導入されている例に触れるなかで

「食料品をはじめ、活字文化の保護に欠かせない新聞や書籍が対象だ」

と、再び新聞に触れた。通常、新聞には1日に2本の社説が掲載されるが、9月11日の社説は2本分のスペースを使って1本の社説を載せるという力の入れようだ。

   産経新聞も社説にあたる「主張」の欄で9月8日に

「日本の消費税にあたる付加価値税が20%前後の欧州各国では、食料品や新聞などの生活必需品に軽減税率が適用されている」

と、読売と同様の主張を展開した。毎日新聞も9月11日に

「税負担の軽減策 還付案は直ちに撤回を」

と題した社説を掲載し財務省案を批判したが、軽減税率の新聞への適用には触れていない。

   比較的抑制的なのが朝日・日経だ。朝日新聞が9月11日に掲載した社説のタイトルは「消費税の還付 案の利点生かす論議を」。財務省案については、

「軽減税率の問題点を意識した内容と言える」
「手間とコスト、情報管理のあり方など、実務や運用上の懸念もある」

と中立に見える立場だ。「新聞」という単語も登場しない。

   日経新聞は9月11日、社会保障・税一体改革の視点忘れるな」と題して社説で、財務省案について

「課題はあまりに多い」
「所得税や社会保障の給付や負担をどう変えるかとセットで、消費税の負担軽減のあり方を考える必要がある」

と指摘するにとどめ、軽減税率の導入を直接的に求める表現は避けた。

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