神戸連続児童殺傷事件(1997年)を起こした「元少年A」を名乗る男性(33)が警視庁の内偵捜査を受け、逮捕まで検討されていると、女性誌が報じた。事実関係ははっきりしないが、警察がマークするだけの理由はありそうだ。
男性を巡っては、自らの手記「絶歌」を2015年6月に出版して論議となったのに続き、今度は9月に入ってホームページを公開したことも明らかになった。
女性セブンの報道通り「2冊取得」なら旅券法違反
「存在の耐えられない透明さ」とうたったホームページでは、遺族への謝罪の言葉もなく、手記のPRなどの言葉を連ねた。ナメクジを使ったアートや全裸のポーズ写真などの画像もアップし、その奇怪な内容から、男性は更生していないのではないかとの危惧も噴出したほどだ。
そんな男性について、警視庁の公安部が24時間体制でマークしており、犯罪の事実をつかんで任意同行も検討していると、女性セブンの17日発売(首都圏など)号が報じた。
記事によると、男性は、手記を出す直前の15年4月から東京都内のアパートで暮らしており、住み始めたころに都内でパスポートを2冊も取得した。これは、事実とすれば、旅券法違反になる。
同じ日に違う役所で申請すれば、取得できることもあるという。2冊あれば、いざというときに国外に出やすくなったり、別人の顔写真を貼って本人と知られずにアパート転居や銀行口座開設などができたりするメリットがあるとしている。
さらに、パスポート取得に当たっては、男性が住んでいるところとは別の住所で申請したともいう。もしそうなら、住民票を偽造していた可能性があることになり、公正証書等不実記載に当たるとした。
一方、女性セブンは、男性が改名した後の氏名をつかんだとして、そのイニシャルも報じた。
落合洋司弁護士「警察が動くかどうかは状況次第」
記事によると、男性は、04年に医療少年院を出所する前に、法務省の「超例外的措置」で改名したのだそうだ。
氏名の変更については、戸籍法の第107条で、やむを得ない事情があるときは家庭裁判所の許可でできるとされている。その事情とは、社会生活上で重大な支障を与えるなどのケースだ。
今回は、もし男性がアパート転居などで今後支障が出ることを考えてパスポートを二重取得したとすると、違法行為とはいえ警察が本気で捜査に乗り出すものなのか。あるいは、最近の言動から再犯の恐れがあるとして、早くその芽を摘もうと動いているのか。
元東京地検公安部検事の落合洋司弁護士は、もし犯罪事実があるとして、警察が動くかどうかは状況次第だと指摘する。
「男性は、非行歴があることになりますが、今度は初犯の扱いですので、旅券法違反などでは実刑にはなかなかならないでしょう。それでも、次に犯罪をすれば実刑になると、公安部が抑制効果を狙って動く可能性はあると思います。緊急性がないと判断すれば、犯罪事実をつかんでおいたうえで、とんでもないことをやり出しそうなときに未然に防ごうと動くかもしれません。警察がどの程度、緊急性があるとみているかによって違うでしょうね」