安全保障関連法案の参院採決を間近に控え、連夜行われている国会前の抗議デモも激しさを増している。歩道に参加者が収まりきれず、車道にあふれ出ることも多い。事前に決まった時刻が来ると主催者は活動の終了を宣言し、参加者を地下鉄の駅などに誘導するのが通常の動きだ。
ただ、こういった動きには異論も出ている。国会前の人がまばらになった結果、国会前の「占拠」ができずに結果的に法案の採決を許してしまうというのだ。2014年に2ヶ月以上にわたって香港の幹線道路が占拠された「雨傘革命」をはじめとする抗議行動を念頭に置いているとみられる。
また歩道鮨詰めでバリケードが決壊
8月30日に続いて9月14日にも大規模なデモが行われ、主催者発表で4万5000人が参加。警視庁は1万7000人程度が参加したとみているようだ。この日のデモも、8月30日と同様に歩道が鮨詰め状態になり、ほどなく警察のバリケードが決壊。多くの参加者が車道にあふれ出て、「戦争法案絶対反対!」などと声をあげた。
デモは、8月30日と同じ「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」が主催。抗議活動は20時までの予定で、予定の時刻が来ると主催者は活動終了を宣言し、帰宅を促した。この行動に異論が出ているのだ。
主催者の誘導で多くの人が帰途につく中、引き続き車道上にダイインしたり、座り込んだりする人もいた。こういった人々は、警察から強く警告されて歩道に上がらざるを得なくなった。主催者が「終了宣言」をしなければ、警察も車道に残った大量の参加者を排除できないはずだ、という訳だ。
安保法案に反対する人やデモ参加者からは支持を集めているウェブサイト「田中龍作ジャーナル」は、主催者側の対応を、
「参加者に帰宅を促す主催者は、警察に手を貸したに等しい」
「主催者の終了宣言は『どうぞ強行採決して下さい』と言ったようなものだった」
などと批判している。
デモ主催者は「責任ある自主的な警備をもって対応する所存」
デモを主催した「総がかり行動実行委員会」は、8月30日よりも抗議活動の参加者数が増える見通しを踏まえて、鉄柵を撤去したり国会前車道を開放するなどして参加者の安全確保を求める申し入れを9月7日付けで警視庁に行っている。その中で、
「私たちは行動に対しては参加者との信頼関係を前提に、責任ある自主的な警備をもって対応する所存であり、現場の整理誘導は第一義的に主催者にゆだねるべきであることも強く要請する」
とある。主催者による「現場の整理誘導」と、一部で主張されている「占拠」との折り合いをつけられるかは微妙だ。ここ数年で参加者の裾野が広がっていることもあり、抗議活動のあり方が問われそうだ。
法案に反対する学生団体「SEALDs(シールズ)」の中心メンバー、奥田愛基(あき)氏(23)が9月16日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で開いた会見でも、「アラブの春」や「オキュパイ・ウォールストリート」、台湾や香港で行われた抗議活動についての見解を聞く質問が出た。奥田氏はユーチューブなどでこれらの抗議活動の様子を見ながら、シュプレヒコールなどに取り入れていることを明かし、
「台湾、香港ではデモクラシーということが実際にイシューとしてあった。実際に留学生が日本に留学したり、日本の学生が向こうに留学したりといった交流があり、お互い『アジアの中でデモクラシーがどうあるべきか』について話し合ったりもした。その辺は本当に影響を受けていると思う」
と述べたが、「占拠」することへの直接の賛否は示さなかった。