東京都心と羽田空港が初めて船の定期便で結ばれることになり、2015年9月15日、報道陣向けの試乗会が行われた。出発地は、秋葉原に近い万世橋の「船着き場」だ。ここから乗客を乗せた船が出るのは珍しく、多くの人の注目を集めていた。
便は2020年の東京五輪・パラリンピックを前に、船による輸送手段を活用し、地域活性化につなげようと企画された。当面はガイド付きの観光船として運航し、将来的には実用的な移動手段としての整備も目指す。
船着き場、これまでほとんど利用されたことがない
便は、国土交通省や千代田区、クルーズ業者らでつくる「秋葉原・天王洲・羽田空港舟運プロジェクト準備会」が企画。すでに羽田空港から横浜やお台場行きの便は設定されているが、都心に乗り入れる便は初めてだ。
神田川に架かる今の万世橋は1930年に完成。完成時に船着き場も整備され、国が管理しているが、ほとんど利用されたことがない。最近では、15年5月の「神田祭」の「船渡御」と呼ばれる神事で、船で運んで来た神輿を陸に引き上げるのに利用された程度だ。
船は、主に日本橋を拠点に隅田川のクルーズを手掛けるジール(港区)が運航。運河クルーズ用に設計された、屋根と壁がない双胴船(全長11.7メートル、40人乗り)に乗り込み、見慣れた秋葉原の町並みを見上げながら出航した。
シルバーウィークには約1500人が利用
船は7~8ノット(時速13~15キロ)という、自転車よりも少し遅いくらいの速度で、休憩をはさみながら約20キロの道のりを2時間以上かけて進む。
まず神田川を下り、隅田川を東京スカイツリーを眺めながら南下。築地市場や汐留の町並みを横目にレインボーブリッジをくぐり、休憩地の「天王洲ヤマツピア」(品川区)に着く。その後は京浜運河で東京モノレールとしばらく併走し、海老取川を経て最後は多摩川に出て羽田空港国際線旅客ターミナル近くにある船着場に到着した。
30か所以上の橋をくぐるのも見所で、神田川や空港近くでは手を伸ばせば橋に手が着きそうになるほどの迫力だ。
シルバーウィーク(9月19~26日)には社会実験として一般の乗客も乗せる予定で、平日分以外はすでに満席。延べ1500人以上が利用する予定だ。利用者のアンケートをもとに今後の展開を検討する。