関東・東北を襲った記録的な豪雨は常総市など各所に甚大な被害をもたらした。道路の冠水も広範囲で見られ、水かさが膝近くまで来ている場所を歩いている人たちには危険がつきまとう。長靴を履いている人が多いが、「これは危ない!」といった声もある。
長靴に水が入って歩きづらくなる、というのが理由で、どうしても歩かなければならないのならスニーカーにしたほうがいい、という意見も出た。本当だろうか。
長靴以上に水かさがあれば水が入り歩きにくくなる
2015年9月10日放送のテレビ朝日系情報番組「ワイド!スクランブル」ではこの日、東武鉄道伊勢崎線「せんげん台」駅周辺の様子を生放送した。大雨の影響で電車が動かず、通勤、通学の人たちは膝近くまで冠水している駅周辺にとどまるしかなかった。
それでも移動しようとする人もいて、何かに躓いたのか水の中に転倒する男性の姿も映った。実況中継したアナウンサーは、これだけ水が多いと下に何があるのか分からないから、本気で気を付けなければならない、とし、
「裸足の人もいるが下が濁っていて見えないので、長靴や何かを履いて渡った方がいいと思われます」
と呼び掛けた。その直後に、気象予報士の船木正人さんがあわてて、
「実は長靴もよくないんですよ」
と割って入った。長靴以上に水かさがある場合は、中に水が入ってしまい歩きづらくなる。歩く場合は、長い杖のような棒で前を確認しながら、
「靴はスニーカーなど普段の靴を履くようにしたい」
と注意を呼びかけた。この放送がネット上で話題になり、
「洪水のときは長靴は危険と」
「浸水時の長靴ダメなんだ。知らなかった...。覚えておこう。。メモ」
「でも、反面、スニーカー等だと水の中を流れる瓦礫等から足を守れないって気もする」
などといった議論がツイッターや掲示板で交わされた。釣りをやっている人にとっては常識だ、などと発言した人もいる。
「ウェーダー」と呼ばれるスーツを着ると動きやすい
常総市がある茨城県の県民情報センターの担当者にそのあたりを聞いてみると、こんな答えだった。
「今回の災害においては、長靴を履いて避難をすると危ないという指示は災害対策本部では行っておりません」
ある長靴メーカーに取材すると、冠水時に長靴で出歩くのは危ないという情報がネット上に出回っているのを知っているが、それに忸怩たる思いをしているのだという。確かに長靴の中に水が入ると重くなり動きにくく、水の勢いで体ごと流されてしまうイメージがある、しかし、
「長靴は膝近くまで水がある場所を歩くようには設計されていないし、仮にスニーカーや革靴を履いたとしても水に濡れ重くなるから結果的に変わらない。つまり、そのような場所を歩くのには適していないし、そもそも危険な場所は歩いてはいけない、ということなんです」
と説明した。冠水の深い場所を避けて長靴に水が入らない場所を選ぶならば履物は長靴が一番優れている。また、どうしても膝ほど高い冠水地を歩かなければならないならば、漁師が着ている長靴とサロペットが一体化したような「ウェーダー」と呼ばれるスーツを着ると動きやすい、ということだった。