「しゃぶしゃぶ温野菜」で働いていた学生アルバイトの男性と労働組合「ブラックバイトユニオン」が、フランチャイズの運営会社DEW JAPANとその本部であるレインズインターナショナルに、労働環境の改善とこれまで受けた被害の回復を求めて団体交渉を申し入れた。
レインズインターナショナルは「しゃぶしゃぶ温野菜」のほか、焼き肉チェーンの「牛角」や居酒屋チェーンの「土間土間」や「かまどか」などを運営している外食チェーン大手。東証1部に上場する外食プロデュース企業のコロワイドの連結子会社でもある。
「しゃぶしゃぶ温野菜、真っ黒じゃねえか...」
これらが事実だとすれば、さすがに酷すぎるのではないか――。そう思わせる勤務状態が明かされた。
ブラックバイトユニオンの活動報告(2015年9月10日付)によると、「しゃぶしゃぶ温野菜」で働いていた学生アルバイトの男性は2014年5月から勤務。当初は週4日、1日5時間程度で働いていたが、14年12月ごろから人手不足などのために出勤回数が増えて、勤務が過酷になっていった。
2015年4月12日から、休職を申し出た8月11日までの期間は1日も休まずに、4か月連続勤務を強いられた。ここ数か月間は1日12時間程度働いていた。それにもかかわらず、一部の賃金は未払いのままになっている。
退職を申し出ると、店長から「ミスが多いから懲戒免職」「どうやって責任をとるんだ」と言われ、胸ぐらをつかまれることがあったり、この春先には4000万円もの損害賠償の請求を店長から示唆されたり、「2時間食べ放題コース」のお客を時間どおりに帰せなかった罰として「自腹」で支払うようたびたび強要され、通算で十数万円を支払わされたりした。
さらに8月12日未明には、店長から帰宅途中の男性に、「家に行くから待ってろよ。殺してやるから」という、脅迫めいた電話があったとされる。
「しゃぶしゃぶ温野菜」での過酷なアルバイトで、男性は精神的にも肉体的にも多大な被害を受けたうえ、学業面でもアルバイトのために大学にも通えなくなって15年度前期のすべての授業の単位を落としてしまったという。
インターネットには、
「ヒドイのひと言... 団体交渉の申し入れというレベルではない」
「これはアウトですね。証拠も残っており、脅迫罪にあたるかもしれません」
と、「しゃぶしゃぶ温野菜」へ多くの非難の声が寄せられている。
一方、レインズインターナショナルは9月11日、「申し入れの内容や事実関係を精査したうえ、適切に対応してまいります」とのコメントを発表している。
会社や店に、誰でも「洗脳」される可能性がある
今回の団体交渉の申し入れについて、ブラックバイトユニオンが所属する総合サポートユニオン執行委員の青木耕太郎氏はツイッター(9月10日付)で、深刻な人手不足で「店長が8か月連続勤務、学生バイトは4か月連続勤務を強いられていた」とし、「運営会社は、人員補充を十分にできずにいたにもかかわらず、営業時間も営業日も変えなかった」と、会社側が打つべき手を打たなかったと主張している。
さらに、学生アルバイトの男性が「自分のミスを責められ続け、パワハラを受け続けて『洗脳』されていた」とも指摘。会社や店の「言いなりになる」ということらしい。
年間300件超にのぼる学生アルバイトの労働相談にあたり、ブラックバイト対策を支援する首都圏青年ユニオンは、「こういったことはよくあることです」といい、「たとえばシフト勤務などで穴があくと、アルバイトに電話で連絡があるのですが、1度でもお店の要求を断ると『次から出てこなくていい』などと言われるんです。そうやって、逆らえない、逃れられないようにしていくことを繰り返していくうちに『洗脳』されていきます」と、誰でも「洗脳」される可能性があると警告する。
「お店にパワハラに遭っている人、洗脳されている人が一人でもいると、『自分も同じ仕打ちに遭う』ことが想像できるので、お互いに辞めづらくなるんです。そうやってアルバイトをマインドコントロールする職場環境が『洗脳』や『脅迫』につながりやすいといえます」と話す。
総合サポートユニオンの青木氏によると、「しゃぶしゃぶ温野菜」に団体交渉を申し入れた学生アルバイトの男性は、「『自分のせいで店長はクビになる』という店長の話が、じつはウソだったことがわかったとき」に「洗脳」がとけたそうだ。
男性は「他の人が同じ目に遭わないようにと団体交渉を申し入れた」と話している。