鬼怒川で越水した場所の一部は、ソーラーパネル設置のため自然堤防が削られていたことが分かった。以前から危険が指摘されていたが、なぜ止められなかったのか。
越水した茨城県常総市の若宮戸地区は、なんと人工堤防のない場所だった。1キロほどにもわたるその場所は、民有地になっている鬼怒川沿いの丘陵地が自然堤防の役を果たしていた。
河川区域外で、届け出の必要がなかった
ところが、千葉県の業者が2014年3月下旬、ソーラーパネル設置のため横150メートル、高さ2メートルにわたって自然堤防を削ってしまった。不安に思った地元住民から市などに通報があり、河川管理者の国交省下館河川事務所と市、業者が話し合いをして、元あった丘陵地の一番低い高さまで、国が大型土のうを積んで応急対応をした。
その後、市は、国に対し人工堤防を作るよう要望した。国は、それを受けて、予算のメドはまだ立っていないものの、堤防の設計に入っていた。その矢先の越水だった。
下館河川事務所などによると、この自然堤防は、河川法が適用されない河川区域外になっている。このため、業者が堤防を削ったり建築物や工作物などを設置したりする場合でも、届け出の必要はない。今回は、堤防を削ったことで治水上好ましくないと考えて、土のうを積むことをお願いしたという。
人工堤防計画があると、区域指定せずに放置
河川区域は、原則として堤防と堤防の間とされているが、今回は、なぜ自然堤防まで区域にしていなかったのか。
この点については、河川事務所によると、以前は鬼怒川沿いまで小高い山になっており、そこまでが河川区域になっていた。その後、川側の山が削られて現在の丘陵地になったため、丘陵地が区域から外れた。
なぜその後に丘陵地も区域に含めなかったかについては、「鋭意、計画を進めて、人工堤防を作ろうと考えていた」からだと説明した。つまり、ずるずると放置したままの状態だったわけだ。
なお、ソーラーパネルは、2011年の建築基準法改正などで、建築物でも工作物でもない取り扱いになり、原則として、設置に際して行政に確認申請をする必要はなくなった。しかし、河川事務所などによると、建築物でも工作物でもなくても、河川区域に物を設置する場合は規制対象になり、許可が必要だという。