日系商店に対する「焼き討ち」まで起こった尖閣諸島の国有化から丸3年が経ち、中国の消費者の対日イメージの改善が鮮明になってきた。
日本貿易振興機構(ジェトロ)が中国の比較的購買力がある層の消費者を対象に行った調査では、尖閣問題が原因で日本製品の「買い控え」をしている人は着実に減少し、「よく購入する輸入食品」「海外旅行に行ったことがある国」として日本を選んだ人が一番多かった。ジェトロでは、一度日本を訪れた人から日本の良い評判が中国国内に広がる好循環が生まれているとみており「潮目は変化している」としている。
調査対象は大都市に住む「ミドル・ハイエンド層」
調査は2015年7月11日から20日にかけて6大都市(北京、上海、広州、重慶、成都、武漢)に住む月収5000元(約9万5000円)以上の20~49歳の社会人1224人を対象に行われた。いわゆる「ミドル・ハイエンド層」に属するとされる人々だ。調査結果は9月9日に発表された。
「尖閣問題は、現在、あなた御自身の日本製品の利用抑制(買い控え等)に影響を与えていますか?」
という問いで、前回14年12月上旬の調査では「やや影響している」「とても影響している」と回答した人がそれぞれ43.1%、17.8%だったのに対して、約1年後の今回の調査では38.2%、11.4%と大幅に低下した。
日本を訪問する意欲も高まっている。今回の調査に回答した人のうち、68%が海外旅行に行ったことがあると回答。行ったことがある国を複数回答で聞くと、日本(62.4%)、韓国(38.6%)、米国(35.8%)、フランス(28.4%)の順に多かった。14年12月は韓国(54.3%)、日本(51.9%)、タイ(33.6%)、米国(32.1%)の順番だった。韓国が中東呼吸器症候群(MERS)の影響で大幅に観光客を減らしたという事情はあるにせよ、日本の観光地は中国人から「選ばれる」存在になっているようだ。
ジェトロの石毛博行理事長は、日本を訪れた観光客が日本での楽しい思い出をネットに書き込むなどした結果、「自分も行きたい」と思う人が増えているとみている。
日本政府観光局のまとめでは、15年7月に中国から日本を訪れた観光客数は前年同月比105.1%増の57万6900人で単月ベースとしては最高を記録。1~7月の累計でも113.8%増の275万5500人だった。
「よく購入する輸入食品」は米国上回って首位に
原発事故直後は低下した日本の農産物に対する信頼も回復しつつある。「よく購入する輸入食品」を聞いた項目では、14年12月の調査では米国(50.9%)、日本(42.2%)、韓国(41.8%)の順番だったが、今回の調査では日米が逆転して日本(53.5%)、米国(44.3%)、韓国(33.2%)だった。
低迷が続いていた自動車販売も、16年6月には外車としてのシェアがドイツ系を上回って1位を回復し、7月も首位を維持している。
日本にとって気がかりなのが中国株の乱高下だ。調査から約1週間後の7月27日には、上海株式市場の総合指数は8.48%下落率を記録。約8年5か月ぶりの水準だ。
ただ、夏のピーク時(8月7日~16日)の日本-中国路線の航空旅客数を見る限りでは、現時点では大きな変化はみられない。中国の5都市に乗り入れている日本航空(JAL)の利用者は前年同期比1.0%減の5万8332人だったが、9都市に乗り入れている全日空(ANA)の利用者は13.4%増の7万6322人だった。