弁護士会が求める公共施設利用制限 ヘイトスピーチとは何か、明確化できるのか

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   特定の人種や民族への差別をあおる「ヘイトスピーチ」が問題化するなか、東京弁護士会(伊藤茂明会長)が2015年9月7日、地方公共団体がヘイトスピーチを目的にする公共施設の利用申請を不許可にするなどの対応をとるように求める意見書をまとめ、発表した。

   ヘイトスピーチの規制をめぐっては、憲法21条でうたわれている表現の自由との整合性が常に問題になる。意見書でも、利用制限の判断のためには厳格な要件を設定することが必要だとしており、過去にヘイトスピーチだとして問題になった具体的な例も挙げているが、実施された場合、その線引きを巡って議論が起きそうだ。

  • 嫌韓デモは「ヘイトスピーチ」だという批判が根強く、デモに反対する運動も展開される
    嫌韓デモは「ヘイトスピーチ」だという批判が根強く、デモに反対する運動も展開される
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「朝鮮人を保健所で処分しろ」はヘイトスピーチ

   意見書では、09年~10年にかけて行われた京都朝鮮初級学校(現・京都朝鮮初級学校)に対して行われた「朝鮮人を保健所で処分しろ」といったヘイトスピーチを例に「目の当たりにした子どもたち、教職員、さらには保護者らが受けた精神的打撃は甚大であり、5年以上たった今もPTSDが続く人たちもいる」として、「このような事態を放置している日本社会全体に対しても恐怖を覚えるに至っている」などと指摘。こういった被害者の状況に加えて、日本が加盟している国際人権諸条約を守る観点からも、現状を放置することは「許されない状況」だとした。

   自治体が公共施設の利用を制限する際には「表現の自由を不当に侵害することのないよう慎重な配慮」が必要だとしながらも、名誉棄損表現、侮辱表現、風説の流布、児童ポルノと同様にヘイトスピーチを規制することは憲法上許容されるとした。

制限する際には具体的な要件を定めることを求める

   具体的には、自治体が利用を断るなどする際は、

「公共施設においてヘイトスピーチなど人種差別行為が行われるおそれが,客観的な事実に照らして具体的に明らかに認められる場合」

といった厳格な要件を定めることを求めた。その具体例として挙げたのが14年4月に大阪府門真市の市民ホールで行われた利用申請だ。申請された集会名は「他文化共生の時代 朝鮮の食糞文化を尊重しよう」。集会を宣伝するウェブサイトには、共催団体として「学校給食で,朝鮮子弟には『うんこ』を食べさせようの会」「うんこ喰っとけの会」といった名称が並んでいたという。こういったケースは、利用制限を発動するための要件に「該当することが明白」だとしている。ただ、個別のケースで見ないと「明白」かどうかの判断は難しそうだ。

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