茨城県の農場で見学会を開催、フェイスブックによる情報提供も開始
――今後モンサントでは、日本と世界の食にどのように貢献していきますか。
山根 2030年に穀物の生産量を倍にする目標の達成には、遺伝子組み換えだけでなく、育種技術を磨いて新しい品種の開発期間を早めるような努力も大切です。農薬でも、例えば微生物を活用するような方法も検討しています。
米国では、ビッグデータを活用した栽培方法を推進しています。生産者に対する当社のコンサルティングサービスで、例えば耕作地の土壌の豊かさを分析して、過去の天候データを参照しながら「この畑にはこの品種を植えるとよい」といった助言をするものです。植える時期はいつか、植え方をどうすれば収量アップにつながるか、さらには害虫駆除や病気防除、収穫の時期までもデータに基づいて解析し、各農家に情報を提供します。
生産者はスマートフォンやタブレット型端末などで情報を閲覧でき、例えば「肥料をまく時期」と「正しい肥料のまき方」の情報がタイムリーに、場所を問わずどこでも受け取れます。
一方で遺伝子組み換え作物に関しては、現状では映画や書籍などで事実ではない情報やネガティブな情報も多く出ており、十分に理解を頂けていない面があります。事実ではない情報については科学的な事実に基づいたデータなどを提供し、また、信頼を得るために、技術の目的や、背景にあるミッションなどもお伝えしていきます。
国内では、輸入の許認可を得るためのデータの収集のため、茨城県の農場で遺伝子組み換えのトウモロコシや大豆を栽培しており、見学会も開催しています。実際の現場を見てもらうと、「雑草や害虫の防除効果がはっきり分かる」「こういう技術なら受け入れてもいい」との言葉を頂きます。ただ年間で200~400人ほどと限られた人数ですので、少しでも多くの人に現状を知ってもらうために積極的に広報活動に努めています。また農業や食の議論を活性化するため、2015年にはフェイスブックページによる情報提供も開始しました。 予測される世界的な人口増加に十分な食料を供給するため、農業の生産性向上に技術を通じて貢献していきたいと思います。
プロフィル
山根精一郎(やまね・せいいちろう)
農学博士。1976年、東京大学大学院農学系研究科農業生物学専門課程博士課程修了後、日本モンサントに入社。アグロサイエンス事業部、生物研究部、バイオテクノロジー部などを経て2000年に取締役副社長、2002年より代表取締役社長。