2017年4月に消費税率が現行の8%から10%に引き上げられるのに合わせて導入される、酒を除く「飲食料品」への軽減税率に、国民全員に番号を割り振るマイナンバー制度を活用する案が浮上した。
欧州などの軽減税率は、買い物時に対象品目に低い税率が適用される仕組み。それとは異なり、たとえば消費者が1000円の飲食料品を買うと、一たんは10%の消費税を含む1100円を支払うが、そのうちの2%分(軽減後の税率を8%と仮定した場合)に当たる20円が後日還付される仕組みだ。
買い物のたびにマイナンバーカードをレジで提示...
軽減税率の還付制度(案)は、財務省がまとめた。麻生太郎副総理・財務相は2015年9月8日、閣議後の記者会見で飲食料品などへの軽減税率をめぐり、「われわれとしては最終的に年度末なり年末なり、(負担増分が)戻ってくる還付方式をやる」と、消費税の負担軽減分を後日、消費者に還付する仕組みの導入を検討していることを明らかにした。
その還付方法に、2016年1月から運用がはじまる、税と社会保障のマイナンバー(共通番号)制度を活用しようというのだ。
具体的には、消費者が飲食料品を買い物するたびに小売店にICチップを搭載したマイナンバーカードを提示。ICチップか、あるいは小売店の照合機を通じて還付金額などの買い物情報を記録して、確定申告か年末調整のときに還付金としてまとめて登録した金融機関に振り込む。購入時にレシートなどでいくら還付されるかわかるようにするという。
所得に関係なくすべての人が還付を受けられるようにするが、還付金の合計金額には所得に応じて上限額を設ける方向で検討。上限を超えると軽減措置を受けられなくなる。
また、軽減税率の対象となる飲食料品は「酒類を除くすべての飲料食料品」としているが、「まだ具体的に出ていない」(菅義偉官房長官、7日の記者会見)。今後、詳細を詰める。
そんなマイナンバー制度を使った軽減税率の仕組みに、インターネットでは、
「スーパーのレジでマイナンバーカードだしてポイントカードだしてクレジットカードを出すとか、わけわからない」
「どうせ面倒くさくなって誰もマイナンバーカード提示しないだろうし、財務省は税収が増えてウハウハだよ」
「こんな面倒くさいことやるくらいなら軽減税率やめようよ」
「これって、スーパーのレジが魚とトイレットペーパーを勝手に読み分けるん?」
「いっそT‐ポイントで納税できるようにしちゃえよ」
と、「還付手続きが面倒くさい」「レジが混乱するのでは」といった否定的な声が多い。
結果的に還付金を申請する人が少なくなり、軽減税率を導入しても税収が減らない、財務省にとって「よい仕組み」との指摘も少なくない。そもそも、マイナンバーカードの取得は任意なので還付が行き渡らない可能性もあるし、低所得者でもマイナンバーを使わないと軽減税率の対象から外れる恐れもある。問題は山積だ。
「事実上、マイナンバーカード所持の義務づけだ!」
また、軽減税率にマイナンバーカードを活用する仕組みには、個人情報が流出する恐れを抱く声や、小売店がカードを読み込む照合機の準備などに経費や時間がかかることを懸念する声もある。インターネットでも、
「買い物時にマイナンバーを提示しろと? レジにもデータが残るし、店からは間違いなく情報漏れが起こるよね?」
「こんなのマイナンバーカードを所持していない人は軽減税率を適用されないことになる。カード所持の事実上の義務づけだ」
「つまり政府に消費行動を管理されるという... そんなの気持ち悪い!絶対にイヤ!」
といった具合。
深刻なのは飲食料品を販売する小売店も同じだ。財務省案では、欧州のように軽減税率の対象品目ごとに税率を分けて販売すると、品物ごとに税率を分けて扱う必要があるため、小売店の負担が増すとしていた。
たしかにマイナンバーを活用すれば、そういった負担は減るかもしれないが、新たにマイナンバー対応の最新型のレジを用意する必要がある。たとえば町の魚屋や八百屋、肉屋などで昔ながらのレジを使っていたり、店先に小銭を入れるザルをぶら下げているような商いをしていたりする店にとっては、それだけで大きな負担だ。
消費増税の負担が増えようかというときに、設備投資の負担がかさむのだから、
「百害あって一利なし。日本を潰す気か。まだ10%に上げて還付なしにしたほうがいい。なんとかして潰してほしい」
といった声が起こるのも無理からぬところだ。
国民の理解を得るには、なかなかハードルは高そうだ。