シルバーウイークを目前に控え、東日本大震災以降初めて東北地方で行われる嵐の野外コンサート「ARASHI BLAST in Miyagi」が迫ってきた。そんな中、宮城県内のある旅館が予約客にキャンセルを検討するよう呼びかけ、話題となっている。
背景には、あらかじめこちらの宿泊規約を示して客との行き違いを生まないようにする、という旅館側の目的があった。一方、ネットの反応は「良心的」「不手際だ」と賛否両論だ。
最終チェックイン時間は午後6時半で午後9時には玄関を施錠
コンサート開催地の「ひとめぼれスタジアム宮城」(宮城県利府町)から東北自動車道と国道47号線を経由して約65キロ。鳴子温泉(同県大崎市)にその旅館はある。旅館は2015年8月2日、
「大変申し訳ございませんが、ご宿泊日当日にコンサートにいかれるお客様は、今一度ご予定をご検討いただきますか、ご予約のキャンセルをしていただきますようお願い申し上げます」
との注意書きを公式サイトに掲載。最終チェックイン時間は午後6時半で午後9時には防犯のために玄関を施錠の上、フロント業務も終了する。旅館は家族とスタッフ数名のみで運営しており、コンサート終了後のチェックインや夕食の用意はできない。最終チェックイン時間を過ぎた後はキャンセル料が宿泊代金の100%発生する。そういった規約をあわせて示しつつ、コンサート後に宿泊を予定している客へ予約キャンセルも検討するよう呼びかけた。
9月8日午後6時時点で、19日から23日まで開かれるコンサート各日の終演時間は公式発表されていない。ただ、JTBの企画したコンサートツアープラン(編注:すでに販売終了)ではいずれも午後9時~午後11時頃に設定されている。この通りになると、最終チェックイン時間までに旅館へ到着するのは不可能だ。旅館側の言い分は筋が通っているようにも見える。
一方、掲示板サイトなどでは注意書きをめぐり、
「めちゃめちゃ良心的な宿やんけ」
「これは今更すぎる 旅館の不手際だろ」
と賛否両論が出た。
予約ページ備考欄に「午後10~午前0時頃に到着予定です」
注意書きを掲載した真意は何なのか。旅館に取材すると、担当者は「コンサート期間中の予約件数とキャンセル件数があまりにも多く、あらかじめこちらの宿泊規約を広く知らせるため掲載しました」と明かす。
コンサート会場からやや離れた場所にあるこの旅館にも、一時予約が殺到した。そのうち、宿泊サイトで予約した一部の客が予約ページ備考欄に「午後10~午前0時頃に到着予定です」「ごはんは何でもいいです!」などと書きこんでいたことが判明。旅館側はこうした予約客をコンサート参加者と判断し、注意書き掲載前から電話やメールで「対応できない」と伝えていた。しかし、時に電話口で「なんで嵐(のコンサート参加者)はダメなんだ」と声を荒げる人もいたという。
また、予約客のほとんどが関東や関西、九州など東北以外から訪れる、という特殊な事情も掲載の理由に挙げる。
「土地勘がありませんから、たとえ10時に着くとお伝え頂いても、10時までに着かない可能性も考えられます。JRの駅(編注:陸羽東線鳴子温泉駅)から旅館までは遠いですが、その時間お迎えには行けません」
最終チェックイン時間などを含む宿泊規約を把握してもらわないと、コンサート当日に予約客とトラブルになりかねない、というわけだ。
取材の最後、担当者は「7月中は対応に追われていましたが、今はもう落ち着いております」と安心した様子で語った。