「抗日戦争勝利70周年」記念行事で明らかになったことのひとつが、中国の北朝鮮に対する冷遇ぶりだ。北朝鮮はナンバー3にあたる崔竜海(チェ・リョンヘ)朝鮮労働党書記を派遣したが、日程は1泊2日の強行軍で、中国首脳との個別会談もセットされなかった模様だ。
北朝鮮の国営メディアも崔氏が訪中して帰国したという事実をきわめて短く報じただけで、朝鮮戦争以来の「血で固められた同盟」も「今は昔」だ。
軍事パレードの席順でも韓国と差がつく
崔氏は、金正恩第1書記、黄炳瑞(ファン・ビョンソ)軍総政治局長に次ぐナンバー3のポジション。崔氏は13年5月に金第1書記の特使として訪中し、習氏と会談したこともある。今回の記念行事でも、習近平国家主席は15年9月3日の軍事パレードを前に、崔氏を含む各国からの代表団を握手で歓迎。国営新華社通信は崔氏と習主席夫妻のスリーショット写真を配信した。だが、今回は個別の会談は実現しなかった。
習氏や李克強首相は記念行事の前後で、国連の潘基文事務総長、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領やロシアのプーチン大統領ら15か国以上の首脳と相次いで個別に会談した。王毅外相も多数の外相級や政府代表と会談したが、中国外務省の発表を見る限りでは、この3人の会談相手に崔氏は含まれていなかった。軍事パレードの席順でも韓国と差がついた。崔氏はVIP席の最前列だったが端の方だったのに対し、朴大統領やプーチン大統領は習氏と近い位置だった。
朝鮮中央通信は崔氏が「出発」して「式典に参加」し「戻った」ことしか伝えない
朝鮮中央通信は9月2日と3日に、崔氏の訪中に関する記事を配信している。記事はきわめて短く、崔氏がそれぞれ「式典に参加するために平壌を出発」し、「式典に参加して平壌に戻った」という内容だけだ。北朝鮮メディアが要人の外国訪問を報じる際は、訪問先で誰と会談したかが必ず含まれるが、今回はそれもない。記事から直接読み取れるのは崔氏の訪中が1泊2日だったことだけだが、要人とは誰も直接会談できないまま帰国したと解釈するのが自然だ。
北朝鮮では、対外的には金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長が国家元首の役割を果たしているとされる。13年12月の張成沢(チャン・ソンテク)氏の処刑で中朝間の政治的パイプが途絶えてしまった上、金正恩氏や金永南氏よりも格下の崔氏しか派遣しなかったことに中国側が業を煮やしているという見方も出ている。
中国外務省、会談の有無聞かれてもはぐらかす
中国外務省の9月7日の定例会見では、崔氏と習氏との会談の有無を確認する質問が出た。質問は、
「会談があったのであれば、朝鮮半島情勢について議論したのか。なかったとすれば、中国政府の北朝鮮に対する不満の表れなのか」
という内容だったが、洪磊報道官は、
「崔書記も朴大統領も中国側が招待した客人で、温かい歓迎を受けた。中国側は北朝鮮、韓国の双方と友好・協力的な関係を発展させられるように取り組んでおり、あなたの推測は正しくない」
とはぐらかした。