新国立競技場、まだまだ「大きすぎる」? 高さは「70メートル」、総床面積ロンドンの1.8倍

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   2020年東京五輪・パラリンピックのエンブレムをめぐる騒動が続く中、ひっそりと新国立競技場を建設・施工する業者の公募が始まっている。

   安倍晋三首相の「現在の計画を白紙に戻し、ゼロベースで見直す」という政治判断をもとに政府が決めた新計画では、旧計画よりも1000億円以上費用を圧縮しているものの、過去に五輪が開かれたスタジアムと比べるとまだまだ大型だ。見直し前の原案を作成した建築家のザハ・ハディド氏らがすでに名乗りを上げているが、今後も「まだ高すぎる」「オーバースペック」といった指摘も出そうだ。

  • 旧国立競技場の高さはスタンド部分で約28メートルだった
    旧国立競技場の高さはスタンド部分で約28メートルだった
  • 旧国立競技場の高さはスタンド部分で約28メートルだった

総床面積は19万4400平方メートル、以前の22万4950平方メートルよりも縮小

   政府が2015年8月28日に発表した新計画では、総工費を2520億円から1550億円に約1000億円を削減。コスト高の元凶だとされた「キールアーチ」と呼ばれる巨大な2本の柱を用いた構造は撤回し、屋根の費用を950億円から238億円に圧縮した。五輪開催時の観客席も7万2000人から6万8000人に減らした。

   それでもまだまだ「大きすぎる」部分は残っている。事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)が9月1日付で発表した「業務要求水準書」によれば、総床面積は19万4400平方メートルで、旧計画の22万4950平方メートルよりも縮小されてはいる。この数字は、「鳥の巣」として知られた2008年の北京五輪メインスタジアム(総工費約513億円)の26万平方メートルに比べると小さいが、ロンドン五輪(同900億円)の10万8500平方メートルと比べると1.8倍の規模だ。

   とりわけ「懲りていない」という指摘が出そうなのが、競技場の高さだ。「業務要求水準書」では、建物の高さを「地盤面から70メートル以下」と指定しているが、旧計画で示された高さも70メートルだった。20階建てビルに相当する高さで、「神宮外苑の景観を破壊する」という批判が出ていた。業務要求水準書には、正確には「建物の最高高さ」「70メートル以下」とあるため、応募する業者が70メートルよりも低い数字を出して設計する可能性もあるが、旧計画に対する批判をJSCが無視したとも受け止められかねない。なお、旧国立競技場の高さはスタンド部分で約28メートル、最も高い照明塔部分で52メートル。北京は69メートル、ロンドンは63メートルだった。

   業務要求水準書は、総床面積19万4400平方メートルの「95%以上100%以下」で建設するように求めている。駐車場やメディアセンターなど、その内訳となる機能別の面積も細かく決められており、その「±5%」の幅で建設するように求めている。面積の上限だけではなく、下限にも制限を設けているわけだ。

   新国立競技場の面積や高さの問題をブログで指摘している建築エコノミストの森山高至(たかし)さんは、

「建築家は無駄を省いた合理的な提案を出すべきだが、こういった記述は建築家が努力や工夫する余地をなくしてしまう」

と、業者が業務要求水準書で定められた上限に近い大きさで建設を進めることを懸念している。

   森山さんは、例えば「できるだけ高さを抑えるように配慮した計画とする」といった記述を加えるなど、大きさや高さの下限を厳しく定めずに業者の自由裁量を広げる方向の修正を求めている。

ハディド氏、過去の経験生かして「最もコスト効率の良い計画」展開

   JSCは設計から施工までを一括で担う会社の募集を9月1日に始めており、応募する業者は政府の新計画を踏まえた技術提案書を11月16日までに提出する。業者は12月末までに決まり、16年1月に事業協定書を結ぶ。

   このコンペをめぐっては、大手設計事務所「日建設計」(東京都千代田区)が9月7日、旧計画の原案デザインを作成した建築家のザハ・ハディド氏の事務所と設計チームを組んだことを発表している。日建設計は「次世代に誇れる世界一の新国立競技場の提案と実現に積極的に寄与していく」、ハディド氏は「(過去の経験を生かして)五輪を前に十分な準備の時間がある状態で完成させられる、最もコスト効率の良い計画」を展開できるとコメントしている。

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