「これからのLINE世代が、どんどんトーク下手になっていく」――数々のトークバラエティー番組で活躍する明石家さんまさんが、無料通話アプリ「LINE」を日常的に使う世代へこう警告し、話題を集めている。
自分の意思を他人へ伝えるとき、LINEスタンプ1個、1行のメッセージでお手軽に済ませてしまう。さんまさんは、そんな「LINE世代」の様子を目の当たりにして「(自分の地位は)あと20年安泰やわ」と皮肉交じりに話す。
「俺、あと20年安泰やわ」と笑いを取る
さんまさんの発言が飛び出したのは2015年9月5日放送のラジオ番組「ヤングタウン土曜日」(MBSラジオ)でのこと。
LINEを利用し始め、最近「うる星やつら」や「タッチ」「ドラゴンボール」「ワンピース」といった人気アニメのスタンプまで愛用していると明かした。
しかし、使う中で見えてきたのは
「これからのLINE世代が、どんどんトーク下手になっていくやろう」
という展望だ。並外れたトーク力と存在感で時に「お笑い怪獣」と称されるさんまさんも、
「電話でウソついたり、逃げるとか隠すとか、ウソがバレるとか、そういうの経てきてんねんな。それでトーク上手くなってきてると思うねん」
とかつての経験が役に立っていると話す。その一方で「その力はね、LINEで崩される」と見る。
同時に、
「文を書くのも下手になる。LINEって長文を書こうとしない」
とも指摘。以前はトレーニングとして凝った長いメールを書いていたものの、LINEを使い始めてめっきり長文を書かなくなったのだという。
LINEの無い時代、意思を伝えるために編み出したさまざまな工夫がスタンプや短いメッセージに置き換わり、使う人のトーク力や文章力を低下させた、とみるのだ。具体的な事例は示していないが、さんまさんはLINEでのコミュニケーションを体験しながらそう感じたのかもしれない。
その後、
「お笑いのプロを目指す人はね、今すぐLINEをやめた方がええかな」
と後輩へアドバイスしながらも、
「俺、あと20年安泰やわ」
と皮肉って笑いを取り、「お笑い怪獣」の片鱗を見せつけた。
話す力、書く力が「退化」
放送を聴いていた人々も一連の指摘にネットで、
「ものすごく当たり前のこと」
「当たってると思う」
と賛意を示した。
さんまさんの感覚を共有する人は他にもいる。東京大、慶応義塾大教授で文部科学大臣補佐官の鈴木寛さんも14年10月26日、ニュースサイト「ダイヤモンド・オンライン」に寄稿した記事で、LINEをよく使う世代のトーク力、文章力の低さを指摘している。
教授や社会人といった相手に電話をかけたり、メールを書いたり出来ない。短文、単語を羅列化するだけで、文章は書けても長文が書けない。そうした大学生の様子を、話す力書く力が「退化」していると表現した。
LINEはトーク力や文章力だけでなく、学力にも影響を及ぼすらしい。東北大学は15年3月19日、無料通話アプリの長時間使用が睡眠時間や学習時間不足に比べ、より大きく学力を低下させるとの研究結果を発表している。調査は仙台市内の市立小中学校に通う生徒4万人以上を対象に「数学のテスト」という形で行われた。
「平日に30分未満しか勉強しない」と答えた生徒群の中でLINEなどの通信アプリを使わない生徒は61点の平均点を取ったのに対し、1日3時間以上使う生徒の平均点は50点以下だったという。
調査チームは、通話アプリの使用で勉強や睡眠の時間が減った結果成績が下がるのではなく、通信アプリが直接成績を下げている可能性がある、と分析している。