「不適切会計」が次々発覚して決算発表を2度延期した東芝は2015年9月7日、2015年3月期の連結純損失は378億円だったと発表した。2度も延期するという事態に追い込まれたのは、過去の決算訂正の見込みを8月18日に公表した以降に、「不適切会計」を告発する社員の内部通報や監査法人の指摘が相次いだためだ。
ただ、これですべてが明るみに出たのかというとそうは言い切れない。「不適切会計」が社内にまん延している中で、経済誌が東芝社員に「内部告発」を呼びかけるなど、新たな「内部通報者」が出かねないからだ。
情報の入手ルートはさまざま、内部通報を見逃し、放置か・・・
再延期の理由は、これまで明らかになっている不適切会計の影響を反映した過去の決算訂正分に加えて、米国で水力発電事業を手がける子会社が引当金を適切に計上していなかったり、減損処理の計算を誤ったりしていた案件が浮上するなど、2015年8月18日以降に改めて調査が必要な案件が国内外の子会社を含めて、新たに約10件判明。それにより決算の集計作業が遅れて、新日本監査法人の監査が間に合わなくなったためだ。
室町正志社長は8月31日の記者会見で、「多大なご迷惑、ご心配をかけ、改めて深くおわびする」と陳謝。新たに判明した約10件に、社員の内部通報で発覚した案件が含まれていることを明かした。
ただ、東芝は「内部通報についての詳細は公開していません」としている。
とはいえ、「不適切会計」はこれまで、室町社長(当時、会長)を委員長に社外取締役や法務・監査担当執行役らで構成する特別調査委員会や、社外の専門家でつくる第三者委員会でも検証してきたが、この「約10件」は見落とされていたことになる。
東芝はコンプライアンス違反に関する社内情報を収集し、自浄作用を働かせて自ら不正を正していくことを目的に、2000年1月に内部通報制度「リスク相談ホットライン」を導入している。電子メールや電話などで社員から通報や相談を、社内事務局か弁護士事務所で受け付けてきた。
2006年4月には取引先からも通報を受け付ける制度も設け、社内外から通報を受け付けられるように整備した。グループ会社も同様の通報制度を導入している。
公表されている直近の2013年度では、寄せられた通報や相談の件数は、社内事務局で受け付けた案件が 57件(うち、匿名は32件)、弁護士事務所が 4件(3件)。合計で61件(35件)の内部通報があった。
これに対して東芝は、不適切な状況がある、またはその恐れがあるとの通報については関係部門へ内容を通知し、改善指示や注意喚起を行ったとしている。
東芝によると、8月18日以降に寄せられた「約10件」に含まれていた内部通報の中にも、「ホットラインを通じて寄せられた情報がありました」と話した。
ただ、「(情報の入手)ルートは必ずしも同じではありません」とも説明。過去に寄せられた内部通報に「不適切会計」についての情報が含まれていたのかどうかは、「すべての情報を会社が知っているわけではありません」という。
仮に含まれていたとしたら、情報を見逃したり、放置したりしたケースがあったのかもしれない。