2016年度予算の各省庁の概算要求が8月末、出そろった。国債費の要求が膨らみ、一般会計の要求総額は約102兆4000億円と2年連続で100兆円の大台を突破し、過去最大を更新した。財務省は年末にかけて査定を進め、予算規模を2015年度並みの97兆円程度に圧縮する方針で、「5兆円の攻防」の活字が新聞に躍る。
だが、来年夏に参院選を控え、与党内では「予算を増やせ」の大合唱が起き始めている。2016年度は2020年度の財政健全化目標達成に向けた計画がスタートするが、予算編成作業は計画初年度から難航必至だ。
「地方創生」や「国土強靱化」だらけ
「財政健全化計画の初年度であり、2020年度の目標につながる予算としていかなければならない」。麻生太郎財務相は9月1日の記者会見で、財政規律を重視した予算編成への意気込みを示した。
政府が6月末に決めた財政健全化計画は、健全化の指標である基礎的財政収支を2020年度に黒字化する旧来からの目標を維持した。内閣府の試算では、名目3%程度、実質2%程度の高成長が続く前提でも2020年度は6.2兆円の赤字となり、黒字達成のためには計画初年度の2016年度から歳出抑制が避けられない。
しかし、各省庁が8月末に財務省に提出した概算要求は、初めて100兆円台を突破した2015年度を上回った。高齢化の進展で社会保障費の要求が過去最大の約32兆円に膨らんだうえ、国の借金残高の増加を受け、利払いなどに充てる国債費も2015年度予算比1割増の約26兆円に上ったことが大きいが、各省庁が「地方創生」や「国土強靱化」などの名目で目いっぱいの事業を並べ上げ、予算獲得を競っているのは否めない。
安倍晋三政権の成長戦略に沿った施策に予算を重点配分する「特別枠」にも、上限いっぱいの約4兆円の要求が殺到。中には、国土交通省が地方創生を掲げて要求した地方の拠点を結ぶ道路整備事業などバラマキにつながりかねないものもある。