がん治療について「手術は受けるな」「抗がん剤は効かない」といった刺激的な持論で知られる元慶応病院放射線科の医師、近藤誠氏(66)の主張をめぐって週刊誌上で論争が続いている。
近藤氏の主張を批判する新潮新書を紹介する記事が週刊新潮に載ったのをきっかけに、同新書の著者と、文春新書で本を出している近藤氏が、週刊文春誌上で対談。さらにその対談をめぐり、2人が互いを批判するという「延長戦」に入っている。
「本物のがん」と「がんもどき」論
発端は週刊新潮2015年7月9日号に「『がんは放置しろ』という近藤誠理論は確実に間違っている!」と題して掲載された記事だ。記事では、15年3月まで東大医学部附属病院の肝胆膵外に所属していた外科医、東京オンコロジークリニックの大場大院長(42)が、自らの著者「がんとの賢い戦い方『近藤誠理論』徹底批判」(新潮新書)の要点を説明する形で近藤氏の主張を批判している。
近藤氏は、がんには「本物のがん」と「がんもどき」があり、大まかに言えば前者は発見時点で転移しているので基本的に治療に意味はなく、後者は放置しても転移せず、手術や抗がん剤治療がかえって悪影響を与えると考えている。こういったことを根拠に、近藤氏は「自覚症状のない固形がんは放置してよい」と主張している。
大場氏は、こういった「がんもどき」論は「個人の体験談に基づいた仮説」に過ぎず、「検証のない仮説は、世間を騒がせた挙句、存在しないと断じられたSTAP細胞と同じ」だと非難。
大場氏は、「数少ない個人体験談、著名人の不幸なエピソードを根拠とし、誂(あつら)え向きの論文結果だけをつまみ食いして、飛躍した結論付けをする」ことが近藤氏の「常套手段」だとも指摘した。