2020年東京五輪の公式エンブレムが取り下げられても、インターネット上は依然、デザインを担当した佐野研二郎氏(43)の話題で持ちきりになっている。
氏の作品を巡っては、デザインの類似や盗作の可能性がネット上を中心に次々と指摘されてきたが、今度は自身の母校でもあり、現在教授を務めている多摩美術大学(東京都世田谷区)の広告作品にも「パクリ疑惑」が浮上してしまった。
「元画像」持ち主、そろって「使用依頼きていない」
疑惑が持たれているのは、佐野氏が手がけてきた多摩美大の雑誌広告シリーズ「MADE BY HANDS.」の作品だ。大学公式サイトによると、デザインは、佐野氏が代表を務める事務所「MR_DESIGN」で働く14年同大卒の女性デザイナーが担当。佐野氏はシリーズのアートディレクターを務めている。
これまでにニューヨークADC金賞をはじめ、さまざまな広告賞を受賞しているのだが、ネット上では約100作品ある中の2作品について、2015年8月末ごろから「画像を無断流用しているのではないか」との声が相次ぐようになった。
1つめは、犬の手影絵を使用した作品。ネットでは、この影絵の部分が2010年に個人ブログに掲載された写真と酷似しているとの指摘がなされている。ブログの写真は手影絵を作る手の方を写したもので、両者を重ね合わせると形がぴったりはまるというのだ。
2つめはメガネを使用した作品で、2012年にアイウエア情報サイト「GLAFAS」が掲載した私物メガネ写真を一部加工して盗用した可能性があると指摘されている。メガネ自体は「Zoff」で販売されている一般的な商品なのだが、こちらも画像が重なるという。
もちろん実際に使用していたとしても、了承を取っていれば問題はない。だが前出のブログ主は9月3日、読者からの質問に対して「使用許諾を取られた覚えはないです」と回答している。「GLAFAS」運営者も同様で、「現在(8月31日)までに多摩美術大学および佐野研二郎氏、デザイナー香取有美氏からの連絡は来ておりません」とコメントしている。
「スタッフが実際使っていたメガネを撮影」
真相ははっきりしないが、画像等の盗用を巡っては「前科」がある。
8月14日、佐野氏はサントリーのキャンペーン賞品だったトートバッグの一部デザインについて、事務所スタッフが第三者のデザインをトレースしていたことを認め、自らの管理責任について陳謝した。
また9月1日には、五輪エンブレムの「展開例」を示したデザイン画像について、佐野氏が個人サイトから写真を無断流用したことを認めたと大会組織委員会が会見で明かしている。
もっとも、トートバッグの件は本人が盗用したわけではなく、展開例の件も本来公にされることのない内部資料だったとの事情から、ある程度の「同情」を示す声もある。それでもプロの仕事として「脇の甘さ」を指摘する声は少なくない。
なお、多摩美大の総務課によると、大学には今回の騒動についての問い合わせがメールや電話で多数寄せられているという。今後の対応については「現在学内で検討中。必要があれば佐野氏にも事情を聞く」としている。
佐野氏は14年4月、美術学部統合デザイン学科が新設されたのに合わせて教授に就任。不定期で特別講義などを担当してきたが、16年以降は「佐野プロジェクト」と呼ばれる3、4年生の授業を担当する予定になっている。
「MR_DESIGN」広報担当者は15年9月3日夜、J-CASTニュースの取材に応じ、「2点の作品につきまして、ご指摘の画像を無断流用したというのは事実無根です」と疑惑を否定。
使用画像や担当スタッフについては、
「犬の画像については、紙で切り絵を制作しMR_DESIGNで撮影したものです。メガネの画像については、この作品を担当したスタッフが実際使っていたメガネを撮影し制作したものです」
「このシリーズは2011年8月1日より制作を開始しておりまして、開始当初より佐野本人と共に複数のスタッフが関わっております。なお、ご指摘のポスターは香取有美が担当はしておりません」
とコメントした。