楽天の大久保博元監督の今季限りの退団が決まった。
1年限りで成果を出せという契約に問題はなかったのか。
自ら辞意表明
下位を低迷していた楽天だけに、大久保監督の周囲はさみしいものだった。そんな雰囲気のなか、2015年8月29日に監督自ら辞意を明らかにした。
「結果が出ない限り、監督が責任をとらなければならない」
その前日までチームは43勝64敗3分け、勝率4割1分8厘で最下位。自力によるクライマックスシリーズ進出の可能性は消えていた。
つまり楽天は、今シーズンは終わり、残り試合は来シーズンに備える――とカジを切ったわけで、早く来年のチーム作りに乗り出したということである。現在の監督にお引き取り願うことは、ファンに対するこれ以上ない球団のメッセージとなる。
楽天と大久保監督の契約は1年。
「常勝チームを作る」というのが昨年オフの球団の計画で、そのために白羽の矢を立てたのが大久保監督だった。常勝チームなど1年や2年で作れるわけがなく、1年契約の監督にどれほどのことができるのか、疑問でしかない。
大久保監督は二軍監督からの内部昇格。一時、臨時で一軍の指揮を執り、それが評価されたのも昇格の理由だった。
「超機動力野球」
これを目指した大久保監督だったが、それが実ることはなかった。
大久保監督はその体型から「デーブ」と呼ばれ、明るい性格からファンの受けは良かった。前任監督の星野仙一からも後押しされての監督就任だった。それから10か月ほどでこの事態となった。
松井裕樹は育てた
同情論が大久保監督を包んでいる。主力選手の故障、頼りの外国人選手が期待通りには働いていない。打線がこれでは得点が伸びず、勝利を手にすることは難しい。それが低迷する最大原因だったことは明らかである。
評価しなければならないのは松井裕樹をクローザーとして起用し、一本立ちさせたことである。昨年、コントロールに苦しんだドラフト1位投手を育てた手腕は捕手出身の監督らしかった。
今シーズン、同じパ・リーグのオリックスは森脇浩司監督を休養させた。6月初めから代理監督で戦い、来季の監督はこれからである。
一方で、セ・リーグのDeNAは、前半戦の首位を評価し、中畑清監督の来シーズン続投を早々と決めた。その後、負けが込んで9月を迎えたときには中日と最下位争いをするまで落ちるという皮肉な状況になっている。
プロ野球は勝負の世界だから「結果がすべて」は当然のことだが、チーム作りを委託した監督と1年契約というのは厳しすぎる。野球人はだれでも監督の座に就きたいと思っている。
しかし、1年契約でも監督をしたい、というのもどうかと思う。監督をする際にしっかりとしたビジョンを伝え、チーム作りの計画を示すことが必要である。勝ちながらチーム作りというのは至難の業なのである。選手は短期間でチーム方針が変わっては戸惑うだろうし、ファンも納得がいかないだろう。
楽天はチーム創立最初の田尾安志監督も1年で終わっている。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)