環境・経産両省のせめぎ合いが続きそう
では、問題の石炭火力発電所とはどういうものなのか。まずは環境省サイドからの説明を聞こう。
環境省によると、国内では33基の石炭火力の新設計画がある。すべて計画通りに進んだとすると、2030年には石炭の発電量の電源構成比が40%台半ばまで達し、7月に政府が決めた26%どころの話ではなくなってしまう可能性が高い。
そもそも、石炭火力は発電のために使うことによるCO2の排出量が、液化天然ガス(LNG)など他の化石燃料に比べても多い。こんなものを次々に認めていれば、もう一つの「26%」のCO2削減などおぼつかない、というわけだ。
また、世界の潮流も日本の石炭火力には逆風だ。欧州は石炭火力縮小に向けて課税を強化することで、発電所が閉鎖されるケースがすでに相次ぐ。米国でも石炭などの火力発電所から出るCO2の削減幅を引き上げる規制強化策を打ち出した。
環境省の攻勢を受け、日本の電力会社などエネルギー企業35社は今夏、自主的なCO2削減策を公表した。2030年度の販売電力1キロワット時あたりのCO2排出量を2013年度に比べて35%減らすというものだ。ただ、各社別のノルマや達成できない場合の対応は示していないことから、実効性を早くも疑問視されている。
とはいえ、電力会社としても、原発停止が続く中で発電効率がよく安価な石炭火力に傾斜したい、というのは営利追求企業として当然とも言える。環境相が「石炭火力をやめろ」とは言っても「CO2を出さない原発をどんどん再稼働しろ」とは言わない点も、経産省や電力業界には不満なところ。原発を含む世論の動向もにらみながらも、石炭火力を新設しようという動きを止めるのは困難で、環境・経産両省のせめぎ合いが続きそうだ。