満員電車以上の混雑の中で
だが、国会に近づくにつれて、前に進む人、引き返す人、その場に留まる人が交錯し、辺りはラッシュ時の満員電車を上回るほどの混雑に陥った。まっすぐ立っているので精一杯だ。
「危ない! 将棋倒しになるぞ!」
男性が叫ぶ。その上、雨脚も強まってきた。こうなるとコールどころではない。気分が悪くなったのか、青ざめた顔の女性が、オレンジ色のベストを来た救護班に先導されて後方へと引き上げていく。だがぺしゃんこ寸前の状況でも、文句を言う人はいない。デモは続く。
開始から2時間が経った、夕方16時。ひとまずメインの抗議行動は終了し、人々は一斉に駅に流れ込んだ。地上では主催者が、「戦いはまだ続きます! 足元に気をつけて帰ってください!」と連呼する。プラカードをかばんの端から飛び出させて、上品そうなご婦人が充実した表情で笑い合っている。
「今日は涼しくてよかったわねえ。あたし熱中症になるかと心配してたんだけど」