「塗りやすさ」を重視して選ぶのがいい
美容・医療ジャーナリストの海野由利子氏は日焼け止めの表示について、「多くの人が使う『顔全体で大豆1粒分』程度の量では、表示されているSPFやPAの効果は得られません」と指摘する。SPFの表示は皮膚1平方センチあたりに2ミリグラム塗布して計測した数値で、顔全体の使用量に換算すると0.8~1グラム。乳液状の日焼け止めなら500円玉大くらいの量になる。現実的には顔につけられる量ではない。「顔全体に大豆1粒分しか塗らなくても日焼け止め効果をしっかりと得るには、普段からSPF50、PA++++のものを使用するのがよいのでは」
そこで、現実的かつ効果的な日焼け止めの使用法について、アンチエイジング医師団のメンバーである2人の専門家に意見を聞いた。
湘南鎌倉総合病院形成外科・美容外科部長の山下理絵医師は、「SPFやPAの強さが異なる日焼け止めを、日常使いとレジャー用など場合によって使い分けるのもよいですが、面倒なら、日常でもSPFやPAが高めのものを使ってはいかがでしょうか」と言う。さらに「SPFやPAの強さを確認することももちろん大切ですが、面倒で塗らなくなってしまうのが一番よくありません。顔だけでなく露出している部分にむらなく塗ること、こまめに塗り直すことが大切です」と強調する。ジェルやクリームなどさまざまなタイプがあるが、自分の肌に合っていること、塗りやすい基剤であることが選び方のポイントだ。「肌に合わなかったり、べたべたしたりして、買ったけれど数回しか塗らなかった、ということにならないように。塗り直しも苦にならないものがいいですね」
紫外線による皮膚の老化(光老化)の研究で世界的に知られる再生未来クリニック院長の市橋正光医師も、汗をかく真夏では、日焼け止めは自然に流れ、効果が減少するため、「塗り直しは大切」と言う。「理想は2時間おきくらいが目安。生活の中で無意識に顔を触ったりこすったりしていることもありますから、マメに塗り直しましょう」
しかし女性の場合、化粧を落として塗り直すのは手間だが......。山下医師は「日焼けしやすい鼻筋・目の下から頬骨の付近や、シミが気になる部分だけお化粧の上から塗り直し、パウダーをはたく程度でもよいと思います。とにかく日常の心がけが大事。紫外線の影響はすぐには症状に現れませんが、日々の蓄積が老化を促進するのです」と言う。
多少面倒ではあるが、肌の健康を保つためには大切なことだ。
「1日くらいいいや」という油断がシミやシワをつくる。自分にとって塗りやすいものを見つけることがカギになるかもしれない。
[アンチエイジング医師団取材TEAM、監修/市橋正光(神戸大学名誉教授・再生未来クリニック神戸院長)、山下理絵(湘南鎌倉総合病院形成外科・美容外科部長)]
参考論文
Assessment of Consumer Knowledge of New Sunscreen Labels
URL:http://archderm.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=2319715
DOI:10.1001/jamadermatol.2015.1253 PMID:26083599
アンチエイジング医師団
「アンチエイジングに関する正確で、最新かつ有効な情報」を紹介・発信するためにアンチエイジング医学/医療の第一線に携わるドクターたちが結成。 放送・出版などの媒体や講演会・イベント等を通じて、世の中に安全で正しいアンチエイジング情報を伝え、真の健康長寿に向き合っていく。HPはhttp://www.doctors-anti-ageing.com 2015年4月1日から医療・健康・美容に関する情報サイト「エイジングスタイル(http://www.agingstyle.com/)」の運営も開始。