4項目の条件を確認
武蔵村山市では、厚労省と感染研が今年1月に近隣自治会の代表などをメンバーとする「施設運営連絡協議会」を設置して意見交換を重ねた。住民理解を深めるため、施設見学会も開催。5~7月に住民向けに4回開かれた説明会には計84人が参加。アンケートに答えた66人のうち、自由記述欄に記入した48人の中では7割が安全確保を条件に賛成の考えを示したという。こうしたことなどから、藤野市長は「住民の理解が得られたと思う」と判断した。
厚労省と武蔵村山市は、稼働合意にあたり、(1)市民の安全、安心の確保を最優先する、(2)必要な診断や治療に特化する、(3)国は住民が加わる協議会で施設の使用状況を報告する、(4)同市以外でもBSL4施設の確保を検討する――の4項目の条件を確認している。
ただ、住民の間には稼働反対の声は依然ある。周辺には学校や住宅地があり、病原体漏出への懸念は根強い。情報公開を徹底し、施設運営の透明性を高めていくのは当然のことで、「事故を想定した住民参加型の訓練の実施を検討するほか、どのような研究をするのかを事前に住民側に説明し、理解を得ていくことも大切」(大手紙論説委員)だろう。
地震やテロ対策を含めた施設の安全確保が不可欠だが、特に施設の老朽化も大きな課題とされる。村山庁舎は建設されて34年がたつ。耐用年数は50年とされおり、厚労省は「将来はここ以外でBSL4を稼働させることも検討したい」としているが、1984年に完成した理化学研究所の同様の施設(茨城県つくば市)もBSL4としての稼働はなお不透明だし、長崎大(長崎市)でも新たに建設する計画があるが、反対する住民も多く、実現の見通しは立っていない。
グローバル化の進展で、新たな感染症の拡大、日本へのウイルスの侵入の危険は高まりこそすれ、下がることはありない。武蔵村山市でのBSL4稼働で一息ついている余裕はない。