国立感染症研究所村山庁舎(東京都武蔵村山市)の施設が、ようやく危険度の高い病原体を扱える施設「バイオセーフティーレベル(Biosafety Level)4(BSL4)」として稼働することになった。
住民の反対などで完成から34年も見送られてきたが、塩崎恭久・ 厚生労働相が2015年8月3日に藤野勝・同市長と面談して稼働で合意、7日正式にBSL4に指定した。それでも周辺の住民らには不安の声や、安全確保を求める意見が根強く、課題を背負っての船出になる。
実験室は二重の壁で囲われ、病原体は三重の容器で凍結保管
この施設は1981年に完成していたが、病原体が外部に漏れ出さないかと心配する地元住民の反対もあり、危険度が一つ低い病原体を扱うBSL3として稼働していた。
世界保健機関(WHO)のルールではBSLのレベルに応じて扱える病原体が決まっている。人に無害なウイルスを扱うBSL1から、エボラウイルス(エボラ出血熱)やラッサウイルス(ラッサ熱)、天然痘ウイルス(天然痘)など最も危険な病原体を扱えるBSL4まで4段階ある。例えばエボラ出血熱については、BSL4でなくても感染の有無は確認できるが、BSL4でなければウイルス分析など治療や研究はできない。
BSL4の施設はどんなものなのか。なにより、病原体が外部に漏れないよう、厳重な管理が行われる。例えば、実験室は二重の壁で囲われ、病原体は三重の容器で凍結保管。病原体を扱う際は箱状の密閉装置に腕を差し込んで行うほか、実験室の気圧を空気が外に漏れないように下げ、二重のフィルターを通して廃棄、排水は加熱と薬液で滅菌するといった具合だ。室内は24時間カメラで監視される。
近年、SARSや鳥インフルエンザなど、世界的に感染症への関心が高まっており、特に昨年来の西アフリカでエボラ出血熱感染が拡大、今年になって韓国でMERS(中東呼吸器症候群)が広がって死者が出て日本でも感染の疑い例が報告されたのは記憶に新しい。厚労省は昨年夏に羽田空港でエボラ出血熱が疑われる患者が見つかったことなどもあり、秋にBSL4として動かせるよう武蔵村山市に協議を申し入れていた。
世界では3月時点で19か国・地域に41施設あり、「先進7か国でBSL4施設がなかったのは日本だけ」(塩崎厚労相)とあって、海外から様々な病原体が入ってくる恐れが高まる中、稼働は厚労省や医学界の悲願だった。