ガソリン価格や電気料金は下がる
イラン核開発問題の最終合意を受け、対イラン経済制裁が解除され、イラン産原油が市場に流入して供給量がさらに膨らむ可能性も含め、需給ギャップが日量250万バレルに達するとされる今の市場環境は当面、好転しないと見られ、原油相場はしばらく1バレル=30ドル台~40ドル台の水準で低迷するとの見方が強い。
原油相場下落の、日本経済への影響はどうか。
マクロ経済的な混乱は、企業活動への打撃、消費者心理の委縮などマイナスに作用するのは当然だ。ただ、そうした突発的混乱状態が収まれば、原油安自体はマイナス面だけではない。
レギュラーガソリンの全国平均小売価格は、2014年7月14日の1リットル=169円90銭をピークに下落に転じ8月17日時点では136円70銭と前週よりさらに1円50下がり、ピークからは2割近く安い。全国の大手10電力の標準的な家庭の平均電気料金(9月)は7562円で、前年同月の7876円から約4%安い。この間、北海道電力と関西電力が値上げ方向に料金体系を見直したが、燃料価格の下落効果が勝った格好。液化天然ガス(LNG)の調達価格も、原油価格と連動している場合が多いので、都市ガス(東京ガスの場合)も標準家庭の月額5203円(9月)と1年前の6021円から値下がりしている。
関係する企業にも恩恵は広く及ぶ。日経新聞のまとめでは、2015年4~6月期決算で純利益の進捗率が高い企業ランキングは、1位の東邦ガス、3位の日本郵船、6位のコスモ石油など、ガス、海運、化学など原油安メリットを受ける企業が上位に並んでいる(8月22日朝刊)。
昨夏からの原油安の効果の試算が、春先にかけて各方面から出た。名目国内総生産(GDP)を5.6兆円(1.2%分)押し上げる(1月・内閣府)、日本の2015年度の実質GDPを0.5%押し上げる(大和総研・2月)、実質GDPは約6兆円増加する(4月・みずほ総研)といった具合だ。原油安だけならありがたい限りなのだが・・・。