「参院安保委 首相の『自席発言』に民主が抗議」。NHKはサイトで、安倍晋三首相の度重なる国会審議中の「ヤジ」に民主党が抗議したことを、こう伝えた。
新聞各紙が「ヤジ」と報じる中、「自席発言」という聞きなれない表現を用いたNHKに対し、ネットでは「正式発言と誤解させる」「首相への配慮か」と批判が集まっている。
新聞各紙は「ヤジ」と表現
NHKはこの記事の見出しで「自席発言」、本文では
「安倍総理大臣が25日、中谷防衛大臣兼安全保障法制担当大臣の答弁を巡って自席から発言したことに・・・」
と表現。見出し、本文ともに「ヤジ」という表現を使わなかった。
同じニュースに関して、新聞各紙は「ヤジ」と表現している。たとえば読売新聞は「首相は21日の同特別委で民主党議員の質問中、『いいじゃないか』などとヤジを飛ばしたほか・・・」、毎日新聞は「安倍晋三首相のヤジなどの不規則発言が目立つとして・・・」としていた。
もちろんNHKが今までのニュースの中で「ヤジ」という表現を使ってこなかった訳ではない。
14年10月、民主党の野田国義参議員が山谷えり子国家公安委員長をヤジったことについて「参議員予算委員会で、『ねんごろなのではないか』とヤジを飛ばしたことについて・・・」としたり、15年2月には安倍首相が日教組に関するヤジをした際には「安倍総理大臣は、先の衆議院予算委員会でのみずからのやじに関連して・・・」としたりしていた。
それなのに今回に限って「自席発言」という耳慣れない表現を用いたことに違和感を持った人が多いようだ。ツイッターには、
「『自席発言』ってなに???NHKの言葉遣い、おかしくない?」
「自席発言って言葉初めて聞いた」
という書き込みが相次いだ。
「印象悪くして支持率に影響すると心配したか」
「どうしてもヤジと言いたくないのなら、せめて不規則発言くらいの表現にしろよ」
など、安保法制をめぐって風当りが厳しい安倍政権に、NHKが配慮したのかとする見方もあった。
NHK「適宜、適切な用語を使っています」
政治評論家の浅川博忠さんは、「自席発言」という表現について「官邸の顔色をうかがって、上層部で穏便な表現にした可能性はある」と話す。
もともとNHKは予算審議や経営委員の任命など、国会や政権とのかかわりが多く、ほかのメディアに比べて、官邸からすれば「優等生」的な傾向がある。浅川さんによれば、「籾井勝人会長の就任の経緯などから、政権への配慮は安倍首相の再登板以降さらに濃厚になっている」という。
「自席発言」には政権への配慮があったのか。NHK広報は「ニュース原稿の表現については、国会論戦のやりとりなどもふまえ、適宜、適切な用語を使っています」と説明。配慮については「まったく当たりません」と回答した。